Letter 医学:HIV-1は受容体結合部位の構造マスキングにより抗体介在型の中和作用を逃れる 2002年12月12日 Nature 420, 6916 doi: 10.1038/nature01188 ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)が持続的に存在してエイズを引き起すのは、抗体を介した中和作用をウイルスが回避可能なためである。HIV-1は、エンベロープに対応する大量の抗体の産生を誘導するが、これらの抗体には中和能力はほとんどない。エンベロープ糖タンパク質gp120の受容体結合部位の機能が保存されており、また露出していて、しかも一般的な抗体フットプリントより大きいために抗体が結合可能だろうということを考えれば、中和能力がないことは矛盾しているようにみえる。gp120と受容体の相互作用には構造再構成が伴うので、gp120に反応する20種類の抗体の結合のエントロピーを測定した。本論文では、抗体が受容体結合部位を認識することが、結合部位のコンホメーション変化を誘導することを報告する。中和力価との相関および受容体−抗体の熱力学サイクルの分析から受容体結合部位の「コンホメーショナル・マスキング」による中和回避機構の存在が考えられる。この回避機構がウイルスと受容体の相互作用とどのように両立するかを明らかにするため、十二量体の可溶性受容体分子について調べたところ、この分子はHIV-1初代単離株を高力価で中和することがわかり、ウイルスのエンベロープ糖タンパク質と複数の受容体が同時に結合することにより、マスキングの効果を十分相殺するアビディティが生じることが示された。こういう方法ならば、細胞表面に存在する受容体なら使えるが、大部分の抗体には使うことができない。つまり、HIV-1 は、コンホメーショナル・マスキングにより、受容体との結合は常時保ちつつ、同時に中和には抵抗できることになる。 Full Text PDF 目次へ戻る