Letter

細胞:Sam68のリン酸化を介したシグナル伝達系によるスプライシングの調節

Nature 420, 6916 doi: 10.1038/nature01153

ヒトの遺伝子の数は、線虫やショウジョウバエの遺伝子と比べてたかだか2倍にすぎないが、こういう比較的少ない数の遺伝子により作り出されるヒトの持つ生物学的な複雑性は、単一の遺伝子から複数種のタンパク質が作られることから生じると説明されている。そこで、もっとも効力を発揮しているのが、メッセンジャーRNA前駆体の選択的スプライシングである。適切な部位で、適切な時間に、特定のスプライス・バリアントが合成されるためには、転写調節に似た、完璧な調節機構のもとにあることが必要である。事実、細胞外シグナルによる複数の細胞内シグナル伝達系の活性化が、選択的スプライシングを制御していることが報告されている。本論文では、シグナル伝達とスプライシング調節を結ぶ機構について報告する。我々は、核内RNA結合タンパク質であるSam68が細胞外シグナル制御キナーゼ (ERK)の今まで知られていなかった基質であることを見出した。Sam68は、生理的条件下ではRasシグナル伝達系によりスプライシングが制御されているエクソンであるCD44のエクソンv5のスプライス調節領域に結合する。Sam68を強制発現させると、ERKによって起こるmRNA中へのv5エクソン配列の取り込みが促進された。この促進効果は、Sam68のERKによってリン酸化される部位に変異を導入すると低下した。一方、in vitroではERKによるSam68のリン酸化はv5エクソンのスプライシングを促進した。さらに、Sam68タンパク質の発現を抑制すると、Rasシグナル伝達系が引き起こす内在性CD44のv5エクソンの選択的スプライシングは見られなくなった。これらの結果は、Sam68タンパク質が選択的スプライシングの典型的な調節体であり、その機能は細胞外シグナルに応じて起こるタンパク質の修飾に依存していることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度