Letter 生態:ジャスモン酸塩やサリチル酸塩は草食動物のシトクロムP450遺伝子類の発現を促す 2002年10月17日 Nature 419, 6908 doi: 10.1038/nature01003 ジャスモン酸塩やサリチル酸塩は植物がつくり出すシグナルであり、食害を受けたり病原体に攻撃された植物体で防御遺伝子を活性化させる。これらのシグナル物質は、天敵による攻撃や実験的な操作によって増強されると、植物体内に有毒化学物質(アレロケミカルとよばれる異種間のシグナル物質)や防御用タンパク質を増大させる。ジャスモン酸塩とサリチル酸塩の2つのシグナルカスケードは異なる植物防御遺伝子群を活性化し、あるいは拮抗的に働きさえするが、両者の間にはしっかりした連絡機構が存在している。ジャスモン酸塩とサリチル酸塩はまた、昆虫による食害を受けている植物に、その草食性昆虫の天敵をおびき寄せるような揮発性分子の産生を増大させて、植物を草食動物から守るのに一役かってもいる。草食動物は、植物側の防御に対抗して、アレロケミカルを解毒するシトクロムP450などの酵素の産生を増大させる。しかし、毒素を摂取してから解毒系を発動させるまでの時間差があると、草食動物が有毒なアレロケミカルに対して無防備な状態となる可能性がある。本論文では、タバコガの仲間Helicoverpa zeaがジャスモン酸塩とサリチル酸塩を利用して、自身のシトクロムP450遺伝子のうち解毒にかかわる4つの遺伝子を、植物内でのアレロケミカル生合成の前、もしくはそれと同時に活性化することを報告する。植物の防御シグナルを「先取り」するこの能力は、寄主植物の産生する毒素からH. zeaを守ってくれる。 Full Text PDF 目次へ戻る