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神経:鋤鼻受容体遺伝子クラスターをもたないマウスにみられるフェロモン応答の異常

Nature 419, 6902 doi: 10.1038/nature00955

哺乳類の鋤鼻器官(VNO)は嗅覚系の一部であり、社会行動や生殖行動を変化させる化学信号となるフェロモンを感知する。だが、VNO中のどの分子受容体がこのような化学感覚刺激を検出するのかは、まだ解明されていない。フェロモン受容体候補と考えられる受容体群は、2種類の異なる、そして複雑な遺伝子スーパーファミリーV1rV2rに属しており、これらは膜貫通ドメインを7個もつ受容体群をコードしている。これらの遺伝子はVNOの感覚ニューロンで選択的に発現されている。しかし、これらの遺伝子がフェロモン応答にかかわっているとの機能的証拠は、現時点では見つかっていない。今回、染色体遺伝子操作技術を用いて、マウスの生殖系列から、完全なV1r遺伝子16個のクラスターを含む約600キロ塩基のゲノム領域を欠失させた。これらの遺伝子は、V1r遺伝子ファミリーに属するとされている12のうちの2つに相当し、V1r遺伝子全体の約12%にあたる。この変異マウスはVNOに依存した複数の行動を欠いている。つまり、雄の性行動の現れと母マウスの攻撃性がかなり変化するのである。電気生理学的には、この変異マウスのVNO上皮は、特定のフェロモンリガンドに対し、検出できるほどの応答を示さない。このような行動障害と化学刺激への応答の欠如とは、V1r受容体群がフェロモン受容体の役割を果たしていることを裏付けている。

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