Letter 神経:学習・記憶の制限分子としてのタンパク質ホスファターゼ1 2002年8月29日 Nature 418, 6901 doi: 10.1038/nature00928 正確で長時間持続する記憶の形成には、学習の繰り返しが必要である。練習は、時間間隔の短い繰り返しや大量集中よりも、長い時間間隔をあけての繰り返しの方が有効である。しかし、有効な学習の後も、頻繁に使わないかぎり、多くの記憶は徐々に消失する。このような学習・記憶の時間的制限の分子機構は、これまで知られていない。今回、タンパク質ホスファターゼ1(PP1)が、記憶の書き込みを制限し記憶の消失を早めることで、学習・記憶の効率を決定していることを見出した。学習中にPP1を遺伝的に抑制すると、練習課題の間隔が短くなっても成績低下が起こらなかった。学習の上昇は、環状AMP応答性要素結合(CREB)タンパク質、Ca(2+)/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)、およびAMPA受容体サブユニットGluR1という3種のタンパク質のリン酸化の上昇と相関していた。さらに、対照群マウスでは、間隔をあけた練習だけに起こるCREB依存性遺伝子発現とも相関していた。学習成立後にPP1を抑制すると記憶の保持が長くなり、このことから、PP1が忘却を促進していることも示唆されている。老齢の変異マウスが記憶を保持し続けたことから、このPP1の性質が加齢依存的な認知減退を説明できる可能性がある。これらの知見は、PP1の学習・記憶の抑制装置としての、そして加齢による認知低下の候補因子としての生理的重要性を強く示すものである。 Full Text PDF 目次へ戻る