Letter 神経:忌避記憶の消去を調節する内在性カンナビノイド系 2002年8月1日 Nature 418, 6897 doi: 10.1038/nature00839 忌避すべき事象の記憶の獲得と保存は、動物界共通にみられる中枢神経系の基本原理の1つである。行動反応は、強化がないと徐々に小さくなり、やがて消失する。この消去現象は重要だが、細胞機構はほとんどわかっていない。1型カンナビノイド受容体(CB1)と内在性カンナビノイド類は、脳内の記憶関連部位に存在し、記憶の調節を行っている。本論文では、内在性カンナビノイド系が、忌避記憶の消去に中心的な役割を果たすことを示す。CB1欠失マウスは、聴覚恐怖条件づけ課題で、記憶の獲得と固定には異常はなかったが、短期および長期の消去に強い異常がみられた。野生型マウスにCB1阻害剤のSR141716Aを投与すると、CB1欠失マウスと同じ表現型が生じたので、記憶消去の際にCB1が必要であることが示されている。これと符合するように、消去試行の間の音提示によって、扁桃体底外側部(忌避記憶の消去に関わると考えられている部位)の内在性カンナビノイドの濃度が高まった。扁桃体底外側部では、内在性カンナビノイドとCB1が、GABA(γ-アミノ酪酸)による抑制性電流の長期抑圧現象に重要な関与をしていた。したがって、内在性カンナビノイドは、扁桃体内の局所的抑制回路に対して選択的に抑制をかけることで、忌避記憶の消去を促進していると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る