生殖幹細胞は分化した配偶子だけでなく自分自身をも産生する特有の能力をもつ細胞であると定義される。自己複製するか分化するかの決定を制御する分子機構の解明は、医学的に広い意味を持ちうる、発生生物学における重要な未解決問題である。Caenorhabditis elegansでは生殖幹細胞は体細胞性の遠端細胞(distal tip cell)によって制御されている。ほぼ同一のタンパク質であるFBF-1とFBF-2はあわせてFBF(fem-3 mRNA結合因子)と呼ばれ、生殖系列の性決定制御因子として同定された。本論文ではFBFがそれに加えて生殖幹細胞も制御することを報告する。fbf-1 fbf-2二重突然変異体では生殖系列の初期増殖は正常であるが、幹細胞が維持されない。FBFによる生殖幹細胞の制御の少なくとも一部は、減数分裂細胞周期への進行を促進するgld-1の抑制によると我々は提唱する。FBFはRNA結合タンパク質のPUFファミリー(Pumilio and FBF)に属している。Pumilioは雌ショウジョウバエの生殖幹細胞を制御しており、また下等真核生物でPUFタンパク質は有糸分裂を促進する。我々はPUFタンパク質による制御が進化的に古く、広く保存された幹細胞制御機構ではないかと考える。