Letter

進化:初期クジラ類における水中行動の進化を示す内耳前庭の証拠

Nature 417, 6885 doi: 10.1038/417163a

初期のクジラ類は陸生四足哺乳類から水中でしか生きられない絶対遊泳動物へと進化したが、その変化を研究した従来の方法は、頭部より後方の骨格の機能解析によるものだった。今回我々は、半規管系という移動運動の神経制御にかかわる主要な感覚器官の1つに注目することで、クジラ類の移動運動様式の進化を独自の視点から評価した。現生クジラ類に見られる特異な点は、体重について補正した場合の半規管弧状部分の大きさが、他の哺乳類のほぼ3分の1になることだ。これにより半規管系の感度が下がるが、これはクジラ類の行動の特徴である体の素早い回転に適合したものと考えるのが最も妥当と思われる。始新世の化石から、この新しい感覚制御法は、陸上生活能力との両立が難しく、クジラ類が海洋環境と結びついて間もない進化の初期に急速に発達したことがわかる。したがって、クジラ類特有の敏捷な遊泳法は、頭部より後方の証拠で示唆されてきたように漸進的に移行して生じたものではなく、移動運動様式を短期間で根本から変えることで生じたものだと見られる。我々は、こうした他に類を見ない半規管系の改変が、初期クジラ類の進化において重要な「後戻りできない」出来事となり、陸上生活からの決別につながったとする仮説を立てた。

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