Letter 化学:分子モーターによる高分子ネットワークの能動的流動化 2002年3月28日 Nature 416, 6879 doi: 10.1038/416413a 絡み合った高分子の溶液や融液は、急激な変形に対しては固体のような弾性抵抗を示し、ゆっくりした変形に対しては流体のように応答する。この粘弾性挙動は、ブラウン運動で駆動される個々の高分子鎖の動力学を反映している。個々の分子鎖は、周囲の高分子の網目をヘビのように通り抜けられるが、その拡散輸送はレプテーション過程によって記述され、非常に遅いので、突然加わった応力の緩和は遅れる。このため、絡み合った高分子の溶液と融液は、応力緩和時間よりも速く起こる変形運動に対して弾性抵抗を示す。今回、筋肉のタンパク質であるミオシンIIにより、アクチンフィラメント溶液の粘弾性挙動を能動的に制御できることを示す。重合したアクチン溶液中の個々のアクチンフィラメントが1つ以上のミオシンの微小フィラメントと相互作用するとき、高分子溶液の応力緩和時間はかなり短くなる。我々はこの効果を、ミオシンの「分子モーター」としての働きによるものと考える。この働きにより、ミオシンはランダムに配向したアクチンフィラメントと相互作用でき、アクチンを溶液中で押し動かし、長さ方向のフィラメントの運動を強める。分子モーターは、レプテーションをスライド運動に変えることにより、絡み合った等方性高分子溶液は脱重合した場合にだけ急激な変形に対して流体化するという、複合流体の基本原理を覆すのである。 Full Text PDF 目次へ戻る