Letter 化学:水素交換反応における時間遅延機構の観測と解釈 2002年3月7日 Nature 416, 6876 doi: 10.1038/416067a 数多くの理論研究や実験研究により、水素交換反応H+H2→H2+Hはおもに「直接反跳」機構によって起こることが示されている。系が同一直線上の遷移状態を経る間にH-H結合の切断と生成が協奏的に起こり、衝突による反跳でH2生成物分子が後方に散乱される。この散乱過程の理論予測と実験観測はよく一致する。H3中間体が関与する間接交換機構も起こると考えられてきたが、1分子反応を追跡するのに用いられるフェムト秒分光法では2分子反応を研究できないため、検証が困難であった。なお2分子反応の時間発展の完全な量子シミュレーションはまだ行われていない。同位体を変えた水素交換反応H+D2→HD+Dでは、生成物の角度分布に見られる前方散乱の特徴は、準結合した衝突複合体で起こりうる散乱共鳴によるとされてきた。今回、この測定を広範囲の衝突エネルギーに拡張し、反応の完全な時間依存量子シミュレーションを用いて結果を解釈したところ、2つの異なる反応機構により、測定される生成物の角度分布の特徴が変化することがわかった。一方の機構は直接的で後方散乱を招き、もう一方の機構は間接的であり、約25フェムト秒遅れで前方散乱を引き起こす。 Full Text PDF 目次へ戻る