Article 生態:ヒトに見られる利他的な懲罰 2002年1月10日 Nature 415, 6868 doi: 10.1038/415137a ヒトの協同作用は進化の研究における難問の1つである。ヒトは、他の生物と違って、血縁関係のない他人と協力し合うことがよくあるが、大きな集団内でも協力し合うことが多いため、その相手とはその後決して出会うことはない。また、協力をして得る名誉は小さいか、まったくない。協同作用に見られるこれらのパターンは、血縁選択の進化論と関係づけられる縁者びいきという動因や、信号伝達理論もしくは互恵行動理論と関係づけた利己的な動因では説明できない。今回我々は、非協力者に対する利他的な懲罰が、協同作用を説明するうえで重要な動因となることを実験で示す。利他的な懲罰とは、懲罰を与える人間にとってその懲罰行為がコストのかかるもので、なおかつ物質的な利益を何も生み出さない場合をいう。利他的な懲罰が可能な場合には協同作用が盛んになり、また不可能な場合には協同作用が崩壊する。今回得た証拠からすると、非協力者に対する悪感情が、利他的な懲罰の背後にある主な機構である。これらの結果からみて、ヒトの協同作用の進化に関する今後の研究は、利他的な懲罰の説明づけに重点を置いていくべきだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る