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宇宙:天の川の3He+の観測から導き出した宇宙のバリオン密度

Nature 415, 6867 doi: 10.1038/415054a

ビッグバン後の原始の元素生成については、軽い元素と同位体、2H、3He、4He、7Liの存在比から絞り込むことができる。恒星進化の標準理論では、3Heは太陽型恒星によってもつくられると予測されており、その存在比は、宇宙論にとってだけではなく、恒星の進化と銀河の化学的進化を理解するうえでも興味深いものだ。星形成の領域(HII;電離水素よりなる星間雲)での3Heの存在比は、現在の局所的な星間物質の数値と一致するが、恒星進化論の直接的な検証となる、惑星状星雲の観測から推測される恒星誕生率とは矛盾するように思われる。今回我々は、これまでの観測結果を一歩進めて考察する。これまでの観測結果と、恒星の軽い元素の生成と崩壊の理解に関する最近の理論的な進展とを結びつけると、水素に対する3Heの原始の存在比の上限が確定できる。つまり、3He/H=(1.1±0.2)×10-5になる。3Heのデータから決定されたすべてのバリオンの原始の密度は、他の宇宙探測から算定された密度とぴったり整合する。ほとんどの太陽質量の恒星は、星間物質を際だって増やすほど十分な3Heをつくり出さないので、これまでの矛盾も解消される。

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