Nature Metabolism に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
white regulates proliferative homeostasis of intestinal stem cells during ageing in Drosophila
doi: 10.1038/s42255-021-00375-x
ショウジョウバエ(Drosophila)のwhite変異体は遺伝学的研究に広く用いられている。関西学院大学および理化学研究所生命機能科学研究センターの佐々木たちは、white遺伝子の代謝の役割が、老化の際の葉酸の代謝を介した腸幹細胞の増殖調節であることを示している。
SARS-CoV-2 infects and replicates in cells of the human endocrine and exocrine pancreas
doi: 10.1038/s42255-021-00347-1
SARS-CoV-2は、β細胞をはじめとするヒト膵臓組織に感染して複製することが明らかになった。感染は、形態学的変化、トランスクリプトームや機能の変化に関連している。
A developmental checkpoint directs metabolic remodelling as a strategy against starvation in Drosophila
doi: 10.1038/s42255-020-00293-4
発育チェックポイントは、将来の生存を確保する目的で、代謝物の利用を調節するのに重要である。理研生命機能科学研究センターの山田貴佑記たちは、数学的モデル化を用いて、ショウジョウバエ(Drosophila)の幼虫の代謝調節にエクジステロイドが中心的な役割を担っていることを明らかにした。
Nutritional modulation of heart failure in mitochondrial pyruvate carrier–deficient mice
doi: 10.1038/s42255-020-00296-1
心筋の代謝柔軟性の障害は、糖尿病や心不全における心機能障害に関連している。 McCommisたちは、心機能にはミトコンドリアでのピルビン酸利用が重要な役割を担っていることを明らかにし、拡張型心筋症マウスモデルにおいて食餌介入により心臓での脂肪代謝を高められることを示した。
Exercise and cardiac health: physiological and molecular insights
doi: 10.1038/s42255-020-0262-1
Moreiraたちは、 運動が心臓の健康、疾患、老化に及ぼす生理学的および分子的な影響について述べている。
Skeletal muscle energy metabolism during exercise
doi: 10.1038/s42255-020-0251-4
HargreavesとSprietは、運動中のATP再合成の調節機構を概説し、筋肉の代謝を標的として運動能力を高める栄養介入についてまとめている。
An artificial intelligence decision support system for the management of type 1 diabetes
doi: 10.1038/s42255-020-0212-y
インスリン頻回注射(MDI)療法を行っている1型糖尿病の人に推奨される毎週のインスリン投与量を提供する意思決定支援システムが報告された。このシステムは、これまでに収集した患者データの解析では、医師による推奨量と高い一致率が見られる。
The small intestine shields the liver from fructose-induced steatosis
doi: 10.1038/s42255-020-0222-9
フルクトースを異化する腸上皮の能力を調整することによって、マウスの肝臓でフルクトースによって誘導される脂質生合成が変化することが示され、小腸でのフルクトース除去が脂肪症を防いでいることが示唆された。
Exercise rejuvenates quiescent skeletal muscle stem cells in old mice through restoration of Cyclin D1
doi: 10.1038/s42255-020-0190-0
Brettたちは、自発的な運動によって、老齢マウスでは静止状態の筋幹細胞(MuSC)の機能や再生能が改善されるが、若齢マウスでは改善されないこと、またこれは静止状態のMuSCにおける運動誘導性のサイクリンD1発現上昇とTGF-β活性低下を介して起こることを実証した。
Hypothalamic oestrogen receptor alpha establishes a sexually dimorphic regulatory node of energy expenditure
doi: 10.1038/s42255-020-0189-6
視床下部の腹内側核は、自発運動や熱産生を制御することによってエネルギー恒常性を維持することが知られている。van VeenとKammelたちは今回、単一細胞RNA解析を用いて、性的二型性のある遺伝子発現と機能を示す不均一なニューロン集団を特定した。
Mitochondrial substrate utilization regulates cardiomyocyte cell-cycle progression
doi: 10.1038/s42255-020-0169-x
心筋細胞の増殖は、通常、生後まもなく起こらなくなる。今回著者たちは、脂肪酸酸化を減少させると、周産期の心筋細胞の増殖期間が延長されること、また、成体の心筋細胞に細胞周期活性を再導入できることを示している。
We need to talk about the Warburg effect
doi: 10.1038/s42255-020-0172-2
腫瘍は、酸素が利用可能な場合でさえも、好気的ではなく嫌気的にグルコースを代謝する傾向がある-この代謝表現型は、最初に報告したOtto Warburgの名前からワールブルグ効果と名付けられており、最初の報告から100年に近づいてきている。数世代の研究者がワールブルグ効果を研究してきているが、その原因とミトコンドリアの酸化的代謝との関係について誤解が残っている。今回、ワールブルグ効果の定義を概説し、がん生物学の現在の理解におけるその位置付けについて論じる。
Serine racemase enhances growth of colorectal cancer by producing pyruvate from serine
doi: 10.1038/s42255-019-0156-2
セリンをピルビン酸とアンモニアに変換するセリンラセミ化酵素が、大腸がんの増殖を支えることが分かった。このことから、がん細胞が細胞のピルビン酸レベルとミトコンドリア量を維持するために用いる新しい戦略が明らかになった。
Ketogenesis activates metabolically protective γδ T cells in visceral adipose tissue
doi: 10.1038/s42255-019-0160-6
ケトン食は、低炭水化物で高脂肪の食事であり、代謝を脂肪酸酸化へ切り替える。Goldbergたちは今回、ケトン食が最初は代謝的な健康状態を改善し、肥満の際の血糖管理に重要な脂肪組織γδT細胞を増殖させることを示した。
Inter-organ cross-talk in metabolic syndrome
doi: 10.1038/s42255-019-0145-5
全身の恒常性は、複数の臓器や分子の作用によって精妙に調整されている。今回Priestたちは、包括的な総説で、代謝調節における臓器間コミュニケーションの複雑性を浮き彫りにしている。
Integrating the inputs that shape pancreatic islet hormone release
doi: 10.1038/s42255-019-0148-2
膵島は、グルコース恒常性を司る不均一な内分泌細胞クラスターである。今回NoguchiとHuisingが、膵島細胞のトランスクリプトームから得られた知見を手掛かりに、各タイプの膵島細胞の主な刺激とその応答について概説している。
Metformin-induced increases in GDF15 are important for suppressing appetite and promoting weight loss
doi: 10.1038/s42255-019-0146-4
抗糖尿病薬メトホルミンがホルモンであるGDF15の血漿中濃度を上昇させることが明らかにされた。このGDF15の上昇は食欲と体重の低減に必要であった。これらはメトホルミンの有益な代謝作用に関与することが知られている。
Mitochondrial DNA stress signalling protects the nuclear genome
doi: 10.1038/s42255-019-0150-8
ミトコンドリアDNAへの持続性ストレスが、cGAS–STING経路および一部のISG(interferon-stimulated gene)の活性化を介して、核DNAの損傷および修復応答を上昇させることが明らかにされた。
A biosensor for measuring NAD+ levels at the point of care
doi: 10.1038/s42255-019-0151-7
Yuたちは、血液や組織などの生体試料において、NAD+レベルを迅速に定量化するための、生物発光および紙を基盤とする手法を報告した。
Mitochondrial haplotypes affect metabolic phenotypes in the Drosophila Genetic Reference Panel
doi: 10.1038/s42255-019-0147-3
BeversおよびLitovchenkoたちは、近交系キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)169系統のミトコンドリアゲノムの塩基配列解読を行い、ミトコンドリアの集団構造に加え、ミトコンドリアのハプロタイプとハエの代謝的変動との結び付きを明らかにした。
Dysregulation of amyloid precursor protein impairs adipose tissue mitochondrial function and promotes obesity
doi: 10.1038/s42255-019-0149-1
アミロイド前駆体タンパク質はアルツハイマー病の病因に関与している。Anたちは、高脂肪食条件下の白色脂肪組織でアミロイド前駆体タンパク質が増加することが肥満を促進し、ミトコンドリアへのタンパク質搬入装置を阻害することによってミトコンドリア機能を損なうことを明らかにした。
Systems genetics applications in metabolism research
doi: 10.1038/s42255-019-0132-x
一般に、多くの代謝疾患は、単一遺伝子の変異や欠損によって生じるわけではなく、多因子疾患であり、遺伝的要因と環境的要因の組み合わせによって生じているため、代謝疾患の研究には全体論的な手法が必要である。今回Seldinたちは、代謝疾患を研究するためのシステム遺伝学的手法について、リソースや利点も含めて概説している。
Metabolic Messengers: ceramides
doi: 10.1038/s42255-019-0134-8
セラミドは生物活性を有する脂質で、細胞のシグナル伝達過程と代謝経路を調節しており、さまざまな代謝疾患に関与している。今回Summers、Chaurasia、Hollandは、セラミドの歴史とともに、その生理的役割、作用機序、および治療可能性について簡潔に総括している。
A nutritional memory effect counteracts the benefits of dietary restriction in old mice
doi: 10.1038/s42255-019-0121-0
マウスでは老齢期の食餌制限(DR)は生存期間を延長させず、代謝の健全性に対する効果がほとんどない。脂肪組織にDRによる遺伝子発現シグネチャーが認められないことから、「栄養の記憶」がDRの効果を妨げていることが示唆された。
Cardiac glycosides are broad-spectrum senolytics
doi: 10.1038/s42255-019-0122-z
強心配糖体ウアバインは直接的な抗がん作用を示す以外に、さまざまな老化細胞に細胞死を起こさせることが明らかになり、強心配糖体が新たなクラスの老化細胞死誘導薬(senolytic)であることが示唆された。
IDOL regulates systemic energy balance through control of neuronal VLDLR expression
doi: 10.1038/s42255-019-0127-7
全身のエネルギー恒常性の制御に脳のリポタンパク質受容体が果たす重要な役割が、近年の知見によって明らかにされている。今回Leeたちは、末梢代謝組織ではなく、ニューロンでのVLDLR量のIDOLを介した調節が、食餌摂取とエネルギー消費を調節していることを明らかにした。
Excess calorie intake early in life increases susceptibility to colitis in adulthood
doi: 10.1038/s42255-019-0129-5
Al Nabhaniたちは、出生後から離乳までの期間の過剰なカロリー摂取が、腸の透過性、サイトカインの発現、および微生物相による硫化水素産生を亢進させることによって、成体期に炎症性腸疾患を発症するリスクを高めることを明らかにした。
Mechanism and effects of pulsatile GABA secretion from cytosolic pools in the human beta cell
doi: 10.1038/s42255-019-0135-7
ヒトβ細胞からの容積感受性陰イオンチャネル(VRAC)を通したGABAの律動的分泌、およびそれに続くGABA許容性のタウリン輸送体(TauT)による取り込みが、インスリン分泌の総量と律動性を調節していることが明らかにされた。
Autophagic lipid metabolism sustains mTORC1 activity in TSC-deficient neural stem cells
doi: 10.1038/s42255-019-0137-5
オートファジーによる脂質分解がTsc1欠損マウスの神経幹細胞においてmTORC1の過剰な活性化を引き起こすことが明らかにされた。
SIRT7 couples light-driven body temperature cues to hepatic circadian phase coherence and gluconeogenesis
doi: 10.1038/s42255-019-0136-6
Liuたちは、SIRT7が、体温への光駆動型の全身性の合図を、HSP70を介して肝臓の振動体と連動させる分子ネットワークを特定し、これによって肝臓において概日位相コヒーレンスとグルコース恒常性が確保されることを明らかにした。
The lipid-droplet-associated protein ABHD5 protects the heart through proteolysis of HDAC4
doi: 10.1038/s42255-019-0138-4
脂肪分解の調節因子として知られるABHD5が、カテコールアミン作動性の刺激に応答してHDAC4を切断するセリンプロテアーゼとしても作用し、代謝ストレス誘発性の心不全を防ぐポリペプチドの形成を導くことが明らかにされた。
The metabolic engine of endothelial cells
doi: 10.1038/s42255-019-0117-9
Falkenbergたちは、内皮細胞で働いている主要な代謝経路の概要を述べて、それらの経路が血管およびリンパ管の増殖や機能に果たす役割を論じ、内皮細胞の代謝を標的とすることで生まれる治療機会を明らかにしている。
Control strategies in systemic metabolism
doi: 10.1038/s42255-019-0118-8
今回著者たちは、代謝調節の基本原理を理解するための枠組みを示し、代謝制御と経済理論との類似性を取り上げて、需要と供給で動く代謝を論じている。
Defects in mtDNA replication challenge nuclear genome stability through nucleotide depletion and provide a unifying mechanism for mouse progerias
doi: 10.1038/s42255-019-0120-1
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製頻度が上昇すると、ヌクレオチドがミトコンドリアへ再配分されるために、核ゲノムの維持に異常が生じるようになることが示された。このことからmtDNAの変異が、哺乳類の早老において細胞や個体の加齢を直接的に進行させる役割を持つとする説に疑義が生じた。
Succinate accumulation drives ischaemia-reperfusion injury during organ transplantation
doi: 10.1038/s42255-019-0115-y
心臓移植で冷保存が細胞に与える影響や、温虚血が損傷につながる仕組みは明らかになっていない。今回著者たちは、温虚血においてコハク酸の蓄積が損傷を引き起こす代謝的に重要な変化であることを突き止めた。
Voltage-energized calcium-sensitive ATP production by mitochondria
doi: 10.1038/s42255-019-0126-8
今回著者たちは、心臓のミトコンドリアのATPシンターゼの調節の枠組みを示した。この過程は、細胞の活性、つまりCa2+、ADPおよびNADHの濃度、ならびにミトコンドリア内膜の電位に依存していることが明らかになった。
Muscle stem cell renewal suppressed by GAS1 can be reversed by GDNF in mice
doi: 10.1038/s42255-019-0110-3
発生を終えた成体の骨格筋は、筋幹細胞の活性化によって再生する能力を維持している。今回著者たちは、加齢に伴って筋幹細胞で誘導される、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型膜タンパク質のGAS1が、筋肉の再生能力を抑制するが、GAS1はグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)によって抑制され得ることを示した。
1-Deoxydihydroceramide causes anoxic death by impairing chaperonin-mediated protein folding
doi: 10.1038/s42255-019-0123-y
虚血性心疾患では無酸素症(酸素欠乏)が生じることが多い。今回Hannichたちは、酵母、線虫、およびマウスを利用することにより、無酸素症に関連する組織損傷と細胞死が、細胞骨格に損傷を与える非カノニカルなスフィンゴ脂質の1-デオキシジヒドロセラミドの蓄積によって引き起こされることを明らかにした。
Hepatic Rab24 controls blood glucose homeostasis via improving mitochondrial plasticity
doi: 10.1038/s42255-019-0124-x
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝細胞内の脂質の蓄積と繊維形成を特徴とする。今回Seitzたちは、肥満者やNASH患者の肝臓でGTPアーゼタンパク質Rab24が発現上昇していることを明らかにした。
Cellular redox state constrains serine synthesis and nucleotide production to impact cell proliferation
doi: 10.1038/s42255-019-0108-x
がん細胞はセリン合成を増強するが、最大限に増殖するには外部からのセリンが必要である。今回著者たちは、酸化型NAD+の要求がセリン合成を抑制すること、またセリン合成が細胞の増殖を支えるプリン産生に必要であることを示した。
Soluble RANKL is physiologically dispensable but accelerates tumour metastasis to bone
doi: 10.1038/s42255-019-0104-1
東京大学の浅野たちは、可溶型RANKLと膜結合型RANKLの機能の違いを解明した。RANKLの生理的機能の大多数には膜結合型で十分であった。一方、可溶型は、腫瘍細胞の骨への移動を刺激することによって骨転移を促進したが、腫瘍細胞の増殖や破骨細胞の分化に影響を及ぼさなかった。
Phospholipid methylation regulates muscle metabolic rate through Ca2+transport efficiency
doi: 10.1038/s42255-019-0111-2
非ふるえ熱産生で骨格筋が果たす役割は十分には解明されていない。今回著者たちは、筋肉において、リン脂質が、カルシウムシグナル伝達を変化させて、エネルギー消費を誘導することにより、全身の代謝率に影響を与えて肥満を妨げ得ることを明らかにした。
Mitochondrial lipoylation integrates age-associated decline in brown fat thermogenesis
doi: 10.1038/s42255-019-0106-z
今回カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米)の田島たちは、ミトコンドリアのリポイル化がマウスの老化した褐色脂肪組織(BAT)の転写後分子シグネチャーであることを特定した。ミトコンドリアのリポイル化の低減が加齢に伴うBAT機能低下と強く結び付いている一方、リポイル化の亢進は老齢マウスのBAT活性を回復させた。
Spatial sorting enables comprehensive characterization of liver zonation
doi: 10.1038/s42255-019-0109-9
肝臓は、放射状に極性を持つ小葉で構成される不均一な臓器である。単一細胞空間的トランスクリプトミクスを利用することにより、肝細胞の遺伝子の半分は小葉での場所により発現に差があることが明らかになっている。今回Ben-Mosheたちは、トランスクリプトミクス、マイクロRNAプロファイリング、およびプロテオミクスからなるマルチオミクス手法によって、肝臓の不均一性の特徴をより高い分解能で明らかにできることを示した。
Endothelial TGF-β signalling drives vascular inflammation and atherosclerosis
doi: 10.1038/s42255-019-0102-3
今回Chenたちは、概して抗炎症性と考えられているTGF-βシグナル伝達が、内皮細胞には炎症促進作用を及ぼすことを報告した。マウスで内皮のTGF-βシグナル伝達を阻害すると、内皮間葉転換の低減などにより、アテローム性動脈硬化が低下して、既に形成されているプラークが縮小した。
Leptin and the endocrine control of energy balance
doi: 10.1038/s42255-019-0095-y
Jeffrey Friedmanは、行動と代謝の調節因子としてのレプチンの生物学的性質と進化的役割について概説している。また、レプチンの分泌不全と分泌過多によって区別される2つの肥満状態が存在すると提唱し、それぞれを「1型肥満(Type 1 obesity)」および「2型肥満(Type 2 obesity)」と呼んでいる。
m6A mRNA methylation regulates human β-cell biology in physiological states and in type 2 diabetes
doi: 10.1038/s42255-019-0089-9
m6A mRNAメチル化は、がんのプログレッションや幹細胞の維持など、複数の細胞過程を調節する。今回De Jesusたちは、m6Aの全体像により、ヒト2型糖尿病の膵島が対照から分離されること、またm6Aがヒトβ細胞の生物学的性質に重要であることを明らかにした。
Oncogenic Rag GTPase signalling enhances B cell activation and drives follicular lymphoma sensitive to pharmacological inhibition of mTOR
doi: 10.1038/s42255-019-0098-8
濾胞性B細胞リンパ腫には、栄養センサーmTORC1の活性化因子をコードする RRAGCに活性化変異を有しているものが存在する。今回著者たちは、そうした変異が栄養枯渇への非感受性をもたらし、B細胞の活性化を支えるT細胞微小環境からのパラクリンの合図と相乗的に働いてリンパ腫の発生を加速させる一方、mTORC1の阻害に対する脆弱性を生じさせることを明らかにした。
Prostaglandin signals from adult germline stem cells delay somatic ageing of Caenorhabditis elegans
doi: 10.1038/s42255-019-0097-9
線虫の一種Caenorhabditis elegansでは、通常、生殖系列の細胞を除去すると寿命が延長するが、Leeたちは、生殖系列の細胞を持たない変異型線虫の寿命が低温で延長しないことを明らかにした。低温(10℃、15℃)は生殖系列幹細胞の枯渇を遅延させて、プロスタグランジンE2というホルモンを放出させ、これが腸内でcbs-1を誘導して硫化水素を発生させることで、寿命を延長させた。
Hypothalamic dopamine signalling regulates brown fat thermogenesis
doi: 10.1038/s42255-019-0099-7
Folgueiraたちは、齧歯類において外側視床下部領域と不確帯のドーパミンシグナル伝達が、褐色脂肪組織の熱産生を増加させて体重の減少とエネルギー消費の増加を引き起こすことを明らかにした。体重の減少とエネルギー消費の増加は、ドーパミン受容体2アゴニスト治療を受けた患者でも認められた。
Human brown adipose tissue is phenocopied by classical brown adipose tissue in physiologically humanized mice
doi: 10.1038/s42255-019-0101-4
褐色脂肪組織(BAT)は熱産生能が高く、肥満治療の有望な標的と考えられている。今回de Jongたちは、ヒトのBATが、熱的中性域に置かれて高脂肪食を与えられたマウスのベージュ脂肪組織よりも古典的褐色脂肪組織に似ていることを明らかにした。
Absence of evidence that Slc12a8 encodes a nicotinamide mononucleotide transporter
doi: 10.1038/s42255-019-0085-0
Reply to: Absence of evidence that Slc12a8 encodes a nicotinamide mononucleotide transporter
doi: 10.1038/s42255-019-0086-z
Role and therapeutic potential of dietary ketone bodies in lymph vessel growth
doi: 10.1038/s42255-019-0087-y
リンパ浮腫は、リンパ系の障害によって引き起こされ、体液貯留および組織腫脹を生じ、主として理学療法によって治療される。今回著者たちは、マウスにおいて、ケトン体であるβ-ヒドロキシ酪酸の投与またはケトン食の給餌によってリンパ浮腫を低減させる代謝的手法を示している。この手法により、リンパ管新生が促進され、体液貯留が低減した。
Glutamine independence is a selectable feature of pluripotent stem cells
doi: 10.1038/s42255-019-0082-3
増殖中の細胞にとって、グルタミンは主要な燃料である。今回著者たちは、外部からのグルタミンに対する依存性の低下が自己複製する多能性幹細胞の一般的な特徴であること、また、この特徴を利用して、マウスやヒトの自己複製能の高い多能性幹細胞を選択できることを明らかにした。
Adipose circular RNAs exhibit dynamic regulation in obesity and functional role in adipogenesis
doi: 10.1038/s42255-019-0078-z
代謝機能を含む、いくつかの生物学的過程では、ノンコーディングRNAが重要な調節因子となっている。今回Arcinasたちは、ノンコーディングRNAの一種である環状RNAが脂肪組織に広く発現し、脂肪形成や肥満の際に動的調節を示すことを実証した。
Metabolic plasticity of HIV-specific CD8+ T cells is associated with enhanced antiviral potential and natural control of HIV-1 infection
doi: 10.1038/s42255-019-0081-4
自然に生じるHIV制御は、CD8+ T細胞が感染CD4+ T細胞を排除する能力に結び付いている。今回著者たちは、HIVを自然に制御できるコントローラーと抗レトロウイルス薬治療を受けた非コントローラーとの間で、HIV特異的なセントラル記憶CD8+T細胞に代謝的な差異があることを見いだし、また、in vitroで代謝を再プログラム化することによって非コントローラーの細胞の抗ウイルス応答が増強されることを明らかにした。
Entry of glucose- and glutamine-derived carbons into the citric acid cycle supports early steps of HIV-1 infection in CD4 T cells
doi: 10.1038/s42255-019-0084-1
CD4 Tリンパ球の代謝活性亢進はHIV-1感染を促進するが、代謝経路による寄与の差異は明らかになっていない。今回著者たちは、HIV-1感染の初期段階を支えるためには、炭素がクエン酸回路に入る必要があることを明らかにした。
Two-stage metabolic remodelling in macrophages in response to lipopolysaccharide and interferon-γ stimulation
doi: 10.1038/s42255-019-0083-2
マクロファージは免疫応答の際の一連の動的機能変化に携わっている。今回著者たちは、この過程でトリカルボン酸回路に2段階のリモデリングが起こることを明らかにした。これはピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体およびオキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の調節によって促進され、免疫調節代謝物の一時的な蓄積を生じる。
Metabolic Messengers: fibroblast growth factor 15/19
doi: 10.1038/s42255-019-0074-3
腸ホルモンFGF19とそのマウスオルソログFgf15は、絶食状態と摂食後状態の間の代謝的移行に関する重要なメディエーターである。今回GadaletaとMoschettaは、FGF15/FGF19の歴史、生理学的役割、分子的作用機序について簡潔に概説している。
The mitophagy activator urolithin A is safe and induces a molecular signature of improved mitochondrial and cellular health in humans
doi: 10.1038/s42255-019-0073-4
今回著者たちは、健常高齢者におけるウロリチンAのFIH(first-in-human)試験の結果を報告し、経口投与による忍容性やバイオアベイラビリティーが良好であることを実証した。ウロリチンAがヒトの筋肉でミトコンドリアおよび細胞の健全性を改善する可能性があることを示す臨床データも示した。
Transcriptional network analysis implicates altered hepatic immune function in NASH development and resolution
doi: 10.1038/s42255-019-0076-1
非アルコール性脂肪肝は肝細胞内の脂質蓄積を特徴とし、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)に進行する場合がある。Haasたちは、NASH患者の肝臓には、可逆的ながら、単純な脂肪肝とは異なる遺伝子プロファイルが認められ、肝臓内に従来型樹状細胞(cDC)とCD8 T細胞の蓄積が見られることを明らかにした。
Leader β-cells coordinate Ca2+ dynamics across pancreatic islets in vivo
doi: 10.1038/s42255-019-0075-2
膵β細胞は高度に接続されており、そのネットワークはインスリンの律動的な放出に極めて重要である。今回Salemたちは、グルコースに最初に応答するとともに、他のβ細胞ととりわけ密接に結び付いているリーダーβ細胞の存在を明らかにした。さらに、β細胞のカルシウム動態および、リーダーβ細胞と非リーダーβ細胞の間の接続性をグルコースが強化することも示した。
Reverse gene–environment interaction approach to identify variants influencing body-mass index in humans
doi: 10.1038/s42255-019-0071-6
今回著者たちは、脂肪酸処理を行ったヒト脂肪細胞のATAC-seq法およびプロモーターキャプチャーHi-C法のデータを利用することにより、ヒトのボディマス指数に影響を与える遺伝子-環境(G×E)相互作用を特定した。飽和脂肪に応答する154の遺伝子が報告され、英国バイオバンクのデータからボディマス指数に関する38の新たなG×Eバリアントが見つかった。
Synergistic substrate cofeeding stimulates reductive metabolism
doi: 10.1038/s42255-019-0077-0
還元的代謝によるバイオプロダクトの合成は、利用可能な炭素やATP、還元剤の量によって効率が変化する。今回著者たちは、産物合成の全体的効率を最大にする目的で、基質を同時に供給する戦略を開発した。この戦略では異化代謝産物抑制が回避され、2種類の微生物においてCO2からの脂質合成で相乗作用が促進された。
Increased β-cell proliferation before immune cell invasion prevents progression of type 1 diabetes
doi: 10.1038/s42255-019-0061-8
1型糖尿病(T1D)では免疫の作用で膵臓のβ細胞が破壊される。今回著者たちは、雌の非肥満性糖尿病(NOD)マウスにおいて、免疫細胞が膵臓に浸潤する前にβ細胞の複製を誘導すると、β細胞の抗原発現が変化し、制御性T細胞依存的にT1Dの進行が妨げられることを明らかにした。
Nrf2 controls iron homoeostasis in haemochromatosis and thalassaemia via Bmp6 and hepcidin
doi: 10.1038/s42255-019-0063-6
鉄恒常性は、毒性を示す鉄過負荷を避けるために厳密に調整されている。今回Limたちは、鉄過剰がミトコンドリアの活性酸素種を介してNrf2を活性化させ、肝臓の類洞内皮細胞のBmp6発現を上昇させることで、肝細胞によるヘプシジンの発現を促進し、全身の鉄レベルを低下させることを明らかにした。
Branched-chain amino acids impact health and lifespan indirectly via amino acid balance and appetite control
doi: 10.1038/s42255-019-0059-2
食餌中のタンパク質は代謝の健全性と加齢に影響を与える。今回Solon-Bietたちは、食餌中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)が、直接的な毒性作用を及ぼすわけではなく、BCAAとそれ以外のアミノ酸とのインバランスによって過食を誘発し、肥満の結果として寿命が短縮すると考えられることを明らかにした。
4-Methylumbelliferone improves the thermogenic capacity of brown adipose tissue
doi: 10.1038/s42255-019-0055-6
肥満および糖尿病は、褐色脂肪組織の活性化で改善され得る。今回著者たちは、ヒアルロナン合成を4-メチルウンベリフェロンで化学的に阻害したり、ヒアルロナンシンターゼ2および3を遺伝的に欠失させたりすると、マウスの褐色脂肪組織の熱産生能が亢進することにより、体重増加が抑制されて、グルコース恒常性が改善されることを明らかにした。
Dynamic interactions of ABHD5 with PNPLA3 regulate triacylglycerol metabolism in brown adipocytes
doi: 10.1038/s42255-019-0066-3
今回著者たちは、PNPLA3およびそのI148Mリスクバリアントが細胞内の脂質代謝に関与する機序を明らかにした。PNPLA3はABHD5と相互作用して、PNPLA2-ABHD5相互作用を妨げることで、褐色脂肪細胞の脂質分解を阻害し、脂質の貯蔵を促進する。PNPLA3のI148Mバリアントではこの相互作用が増強される。
Gpnmb secreted from liver promotes lipogenesis in white adipose tissue and aggravates obesity and insulin resistance
doi: 10.1038/s42255-019-0065-4
代謝は細胞や臓器のコミュニケーションによって厳密に調節されている。今回Gongたちは、肝臓が分泌する因子Gpnmbが脂肪組織の脂質生成を促進して、食餌誘発性肥満の代謝機能障害を悪化させる一方、Gpnmbを阻害すると、体重増加が抑制されて、インスリン抵抗性が低下することを明らかにした。
KLF15 regulates endobiotic and xenobiotic metabolism
doi: 10.1038/s42255-019-0054-7
転写因子Klf15は、胆汁酸合成などのさまざまな代謝過程を制御している。今回著者たちは、Klf15が、第1~3相代謝の各種の遺伝子の発現を直接的および間接的な機序で制御することにより、生体異物および生体内物質の代謝に関する上流の調節因子として働いていることを示した。
Characterization of hypoxia-associated molecular features to aid hypoxia-targeted therapy
doi: 10.1038/s42255-019-0045-8
従来の考えでは、低酸素は薬剤耐性を生じさせるとされる。それに対し今回著者たちは、多層オミクスデータの手法を用いて、腫瘍の低酸素状態に関連する分子的特徴を明らかにし、また、承認薬に対する耐性応答および感受性応答の両方と相関する分子的変化を特定した。
Liver macrophages regulate systemic metabolism through non-inflammatory factors
doi: 10.1038/s42255-019-0044-9
肝マクロファージの炎症促進性活性化や、その炎症促進性サイトカインの分泌が、肥満と関連付けられている。今回Morgantiniたちは、肝マクロファージがIGFBP7などの非炎症性因子の分泌により、明白な炎症促進性表現型を示さずに、肝臓の代謝を障害して、肥満におけるインスリン抵抗性を助長する機序を明らかにした。
miR-147b-mediated TCA cycle dysfunction and pseudohypoxia initiate drug tolerance to EGFR inhibitors in lung adenocarcinoma
doi: 10.1038/s42255-019-0052-9
がんにおいては、上皮増殖因子受容体(EGFR)に基づく標的療法など、従来の治療を受けた後の再発が障害となっている。今回著者たちは、非小細胞肺がんにおいてEGFR阻害剤オシメルチニブに対する耐性が、トリカルボン酸回路および偽低酸素経路に対するmiR-147bの作用によって仲介されていて、この耐性をmiR-147b阻害剤によって操作できることを示した。
Genomic and epigenomic mapping of leptin-responsive neuronal populations involved in body weight regulation
doi: 10.1038/s42255-019-0051-x
井上たちは、遺伝的およびエピジェネティックなツールを用いて、マウス視床下部のレプチン応答性ニューロンで働く遺伝子調節エレメントのマッピングを行った。これらの調節エレメントはGWASの複数の肥満関連SNPと重なっている。
The long noncoding RNA lnc-ob1 facilitates bone formation by upregulating Osterix in osteoblasts
doi: 10.1038/s42255-019-0053-8
今回著者たちは、長鎖非コードRNAのlnc-ob1が骨芽細胞活性の調節因子であることを特定した。遺伝的ノックインまたはプラスミドの薬理学的送達のいずれかによって、骨芽細胞のlnc-ob1発現を上昇させると、骨形成が亢進すること、また、骨粗鬆症マウスモデルの骨量減少が抑制されたことから、lnc-ob1発現の調節が治療に有用である可能性が示唆された。
Hypothalamic microglia as potential regulators of metabolic physiology
doi: 10.1038/s42255-019-0040-0
脳の組織常在骨髄系細胞はミクログリアとして知られており、その活性化は肥満関連の視床下部機能障害を促進すると考えられている。今回著者たちは、脂肪組織常在マクロファージの生物学の領域から学んだことを生かして、ミクログリアについてさらに詳細に概説している。また、ミクログリアは、単に食餌誘発性の損傷に応答するのではなく、視床下部の生理機能を調節する栄養および環境のセンサーとして働くこと、また、この役割が慢性的な過栄養により乗っ取られた場合には疾患が生じ得ることが提案された。
Molecular logic of mTORC1 signalling as a metabolic rheostat
doi: 10.1038/s42255-019-0038-7
タンパク質キナーゼ複合体であるmTORC1(mechanistic target of rapamycin complex 1)は、細胞の栄養およびエネルギーの重要なセンサーであり、さまざまな入力を統合して細胞の増殖を調節する。今回著者たちは、mTORC1シグナル伝達ネットワークの分子論理と、それが増殖シグナルを細胞の代謝制御に結びつけるのに重要な役割を担うことについて述べている。
Metabolic Messengers: adiponectin
doi: 10.1038/s42255-019-0041-z
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌され、さまざまな組織で主として抗アポトーシス、抗炎症、抗繊維形成、インスリン抵抗性改善の活性を発揮する。今回StraubとSchererは、アディポネクチンの歴史、生理学的役割、分子的な作用機序について簡潔に概説している。
AMPK activation protects against diet-induced obesity through Ucp1-independent thermogenesis in subcutaneous white adipose tissue
doi: 10.1038/s42255-019-0036-9
AMPKは細胞代謝のマスター調節因子である。今回著者たちは、構成的に活性のあるAMPK変異が、皮下白色脂肪細胞のエネルギー消費を増加させることによって高脂肪食摂取マウスの肥満を防ぐことを示した。これは、これまで知られていなかったタイプの脂肪細胞の出現によって起こった可能性がある。
Olfaction regulates organismal proteostasis and longevity via microRNA-dependent signalling
doi: 10.1038/s42255-019-0033-z
線虫の一種C. elegansでは、嗅覚による食餌の知覚が寿命を延長させることが知られている。今回著者たちは、食餌のにおいに依存する脳から腸へのコミュニケーションで、線虫の寿命が延長することを明らかにした。食餌のにおいは、miRNAであるmiR-71に依存してAWCニューロンのtir-1 mRNAの発現を低下させた。これは、神経ペプチドの分泌を介して、腸において下流の作用を開始させ、タンパク質恒常性を増進して寿命を延長させた。
Ablation of adipocyte creatine transport impairs thermogenesis and causes diet-induced obesity
doi: 10.1038/s42255-019-0035-x
クレアチンは脂肪細胞での熱産生に使用できる。今回Kazakたちは、この熱産生経路の維持にクレアチンの取り込みが必要であることを明らかにした。脂肪細胞のクレアチン輸送体CrTをノックダウンすると、熱産生およびエネルギー消費が低下するが、クレアチンを補充すると高脂肪食摂取マウスのエネルギー消費が上昇した。
Intestinal insulin/IGF1 signalling through FoxO1 regulates epithelial integrity and susceptibility to colon cancer
doi: 10.1038/s42255-019-0037-8
肥満は大腸炎関連がん(CAC)のリスク増大と関連する。今回Ostermannたちは、高脂肪食が腸上皮細胞(IEC)のインスリン耐性を誘発すること、またCACマウスモデルでIECのインスリンおよびIGF1シグナル伝達を遺伝的に不活化すると、腸の再生が妨げられて腫瘍形成が高まることを明らかにした。
Critical role of ASCT2-mediated amino acid metabolism in promoting leukaemia development and progression
doi: 10.1038/s42255-019-0039-6
アミノ酸は細胞の生存および増殖に必要である。しかし、正常な造血と白血病の発生とにおいて異なるアミノ酸代謝経路が要求されるかどうかについては調べられていない。今回著者たちは、中性アミノ酸輸送体に注目し、悪性の血液細胞では正常細胞よりもASCT2の仲介するアミノ酸代謝への依存性が高いことを明らかにした。
NADPH production by the oxidative pentose-phosphate pathway supports folate metabolism
doi: 10.1038/s42255-019-0043-x
酸化的ペントースリン酸経路(oxPPP)は主要なNADPH生成経路である。今回著者たちは、oxPPPを欠損する細胞の増殖はリンゴ酸酵素またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼが支持できるが、正常なNADPH/NADP比、DHFR活性、葉酸代謝の維持にはoxPPPが必要であることを明らかにした。
Metabolic signatures of cancer cells and stem cells
doi: 10.1038/s42255-019-0032-0
がん細胞は、幹細胞のように急速に増殖することができるが、幹細胞とは異なり悪性のアイデンティティーにほぼ固定されている。今回FinleyとIntlekoferは、がん細胞と幹細胞の増殖を支える同化経路の共通性を明らかにし、また自己複製と分化に影響を与える特有の代謝的特徴を示した。
Metabolic adaptation and maladaptation in adipose tissue
doi: 10.1038/s42255-018-0021-8
脂肪組織は、その大きさ、細胞組成、代謝活性の変化とともに、ホルモンや環境のさまざまな合図に応答する。今回KajimuraとChouchaniは、生理的状態および代謝疾患における脂肪細胞の代謝に関する現時点の理解を概説し、また脂肪細胞の運命や代謝を再プログラムするための戦略を検討した。
Astrocytic mitochondrial ROS modulate brain metabolism and mouse behaviour
doi: 10.1038/s42255-018-0031-6
ニューロンとアストロサイトは、代謝的に協調しているが、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)の産生など、代謝の重要な面で異なっている。今回著者たちは、アストロサイトで産生されたミトコンドリアROSがニューロンの代謝ならびにマウスの記憶や行動に影響を与えることを明らかにした。
Perineuronal net formation during the critical period for neuronal maturation in the hypothalamic arcuate nucleus
doi: 10.1038/s42255-018-0029-0
ペリニューロナルネット(perineuronal net; PNN)は細胞外マトリックス構造であり、皮質および海馬のニューロン可塑性に結び付けられている。今回著者たちは、エネルギー恒常性を調節する視床下部弓状核という重要な領域にPNN様の構造が存在することを報告し、この領域での生後早期のPNN形成がホルモンであるレプチンによる影響を受けることを示した。
Functional identity of hypothalamic melanocortin neurons depends on Tbx3
doi: 10.1038/s42255-018-0028-1
視床下部のメラノコルチンニューロンは、食欲を調節することによってエネルギー恒常性を制御している。今回著者たちは、転写因子Tbx3が、マウスの未成熟および成熟のメラノコルチンニューロンにおいて、そのペプチド性ニューロンとしてのアイデンティティーや機能の調節因子としての役割を持つことを明らかにした。
A network of trans-cortical capillaries as mainstay for blood circulation in long bones
doi: 10.1038/s42255-018-0016-5
骨髄由来の細胞は迅速に全身循環に入ることができるが、それが達成される仕組みは不明である。今回Grüneboomたちは、骨髄腔を全身血管系とつなぐ小さな毛細血管を発見してTCV(trans-cortical vessel)と命名し、長骨の血液の大部分がTCVを通過することを明らかにした。
The hepatokine Tsukushi gates energy expenditure via brown fat sympathetic innervation
doi: 10.1038/s42255-018-0020-9
エネルギー消費を促進する循環因子とは対照的に、エネルギー消費を抑制するホルモンはほとんど明らかにされていない。今回Wangたちは、肥満ではヘパトカインTsukushiが上方制御されていて、脂肪の白色化を促進することによって、交感神経活動および熱産生を阻害していることを明らかにした。
ACC1 determines memory potential of individual CD4+ T cells by regulating de novo fatty acid biosynthesis
doi: 10.1038/s42255-018-0025-4
ACC1は脂肪酸生合成の律速酵素である。今回著者たちは、ACC1の遺伝子欠損が記憶CD4+T細胞の形成を増強し、マウス寄生虫感染モデルにおいて、効率良く寄生虫を排除する仕組みを明らかにし、脂質生合成経路が記憶T細胞形成への運命決定を制御することを示した。
MANF regulates metabolic and immune homeostasis in ageing and protects against liver damage
doi: 10.1038/s42255-018-0023-6
加齢は免疫機能の低下と代謝疾患に関連している。今回著者たちは、さまざまな生物においてストレス応答タンパク質MANFの血漿レベルが加齢に伴って低下することを示し、またMANFが老齢マウスにおいて特に肝臓での免疫機能および代謝機能に有益な作用を及ぼすことを明らかにした。
TGF-β2 is an exercise-induced adipokine that regulates glucose and fatty acid metabolism
doi: 10.1038/s42255-018-0030-7
運動による多くの有益な効果は、運動中に筋肉から分泌される因子、いわゆるマイオカインによって仲介されている。今回著者たちは、TGF-β2が運動誘発性アディポカインと考えられることを初めて明らかにした。TGF-β2は、運動が誘発する血清乳酸値の上昇に応答して皮下脂肪から分泌され、マウスにおいて有益な代謝効果を発揮した。
Coupling Krebs cycle metabolites to signalling in immunity and cancer
doi: 10.1038/s42255-018-0014-7
クレブス回路の代謝中間体は生体エネルギーおよび生合成の要求を満たしているが、近年はシグナル伝達との結び付きも明らかにされている。今回のReviewの著者たちは、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、2-ヒドロキシグルタル酸異性体、アセチルCoAが発揮するそうした非代謝的シグナル伝達機能を免疫細胞とがん細胞の両方においてまとめた。
Microbial regulation of organismal energy homeostasis
doi: 10.1038/s42255-018-0017-4
腸内マイクロバイオームは、宿主の生理機能や、代謝疾患などの疾患の重要な調節要因であることが明らかになってきた。今回Caniたちは、腸内微生物相が宿主の代謝調節に影響を及ぼす機構について概説した。
Slc12a8 is a nicotinamide mononucleotide transporter
doi: 10.1038/s42255-018-0009-4
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)はNAD+の生合成前駆体であるが、NMNがどのようにして細胞内に取り込まれるのかは、完全に解明されているわけではない。今回著者たちは、Slc12a8遺伝子がNMNの特異的輸送体をコードすることを発見した。この輸送体はin vitroおよびin vivoのマウス腸内で、NMNの取り込みと細胞のNAD+レベルを調節していた。
Transferrin receptor 2 controls bone mass and pathological bone formation via BMP and Wnt signalling
doi: 10.1038/s42255-018-0005-8
トランスフェリン受容体2(Trf2)は、肝臓内で働いて鉄恒常性を調節することが知られている。今回著者たちは、Trf2が骨芽細胞特異的にBMPシグナル伝達を調節することで骨恒常性を調節するという、これまで知られていなかった役割を報告した。
An upper limit on Gibbs energy dissipation governs cellular metabolism
doi: 10.1038/s42255-018-0006-7
生物が異なっても代謝フラックスのパターンは類似しているが、その根底を支配している原理は未解明である。今回Niebelたちは、制約に基づく熱力学・化学量論モデルとともに定量的なメタボロームおよび生理学的データを用いることにより、細胞のギブスエネルギー散逸率の上限を発見した。これは各種の生物の代謝を決定付けている可能性がある。
Metabolic regulation of dermal fibroblasts contributes to skin extracellular matrix homeostasis and fibrosis
doi: 10.1038/s42255-018-0008-5
細胞外マトリックス(ECM)の恒常性は組織の正常な機能に不可欠であり、損傷や外傷、疾患で恒常性が乱されると繊維症が生じる。今回著者たちは、解糖と脂肪酸酸化経路が繊維芽細胞の挙動を調節しており、それぞれがECMの上方制御と下方制御において相反する影響を持つことを明らかにした。
Mitochondrial complex III is necessary for endothelial cell proliferation during angiogenesis
doi: 10.1038/s42255-018-0011-x
血管新生では内皮細胞(EC)が解糖を要求するが、この過程におけるミトコンドリア呼吸鎖の働きは明らかにされていない。今回著者たちは、ECの増殖にはミトコンドリアの生合成の役割が必要であり、血管新生にはECのミトコンドリア呼吸が必要であることを明らかにした。
Lnc-ing microRNA activity to atheroprotection
doi: 10.1038/s42255-018-0012-9
細胞や血管へのコレステロールの蓄積は血管疾患の発生を促す。長鎖非コードRNA(lncRNA)であるCHROMEは、過剰なコレステロールの除去に役立ち、アテローム性動脈硬化を防御することができる。
The long noncoding RNA CHROME regulates cholesterol homeostasis in primates
doi: 10.1038/s42255-018-0004-9
コレステロール恒常性の維持はヒトの健康に不可欠である。今回著者たちは、CHROMEと呼ばれる、霊長類特異的な長鎖非コードRNAを特定して特徴付けを行い、CHROMEがmiRNAの微調節によりコレステロール恒常性を制御すること、また、CHROMEの レベルはヒトのアテローム性動脈硬化で上昇していることを示した。
Interaction between hormone-sensitive lipase and ChREBP in fat cells controls insulin sensitivity
doi: 10.1038/s42255-018-0007-6
脂肪細胞でのインスリンシグナル伝達の障害はインスリン抵抗性の特徴である。今回著者たちは、ホルモン感受性リパーゼが細胞質にグルコース応答性転写因子ChREBPを隔離できること、これによってその標的であるELOVL6の転写が妨げられ、インスリンシグナル伝達が低下することを示した。
Mitochondrial pyruvate import is a metabolic vulnerability in androgen receptor-driven prostate cancer
doi: 10.1038/s42255-018-0002-y
前立腺腺がんにおいてアンドロゲン受容体(AR)が駆動する増殖の代謝依存性はほとんど分かっていないが、ホルモン療法が有効でない場合には、治療標的になるかもしれない。今回著者たちは、ミトコンドリアピルビン酸輸送体(MPC)がARによる転写調節を受けること、また、MPCを阻害すると、ホルモン感受性前立腺がんおよび去勢抵抗性前立腺がんにおいて腫瘍の増殖が抑制されることを実証した。
Knockdown of ANT2 reduces adipocyte hypoxia and improves insulin resistance in obesity
doi: 10.1038/s42255-018-0003-x
肥満や脂肪組織の機能不全では低酸素状態が引き起こされることが知られている。今回著者たちは、高脂肪食摂取の開始後早期に、ミトコンドリアタンパク質ANT2(adenine nucleotide translocase 2)が活性化されることで、脂肪細胞の酸素消費が上昇すること、また、ANT2を特異的に阻害すると、脂肪組織の低酸素状態、炎症、インスリン抵抗性が低減することを示した。
GIP regulates inflammation and body weight by restraining myeloid-cell-derived S100A8/A9
doi: 10.1038/s42255-018-0001-z
グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)は、栄養に応答して放出される腸のインクレチンホルモンである。今回著者たちは、骨髄細胞においてGIP受容体シグナル伝達を喪失させると、脂肪組織において炎症性S100A8/A9の放出が促進されることを示し、GIPの抗炎症および抗肥満の機構を報告した。