2025年8月号Volume 22 Number 8
破壊的発見が出にくくなっている
研究者らが、「破壊的な科学」や「新規の科学」が減少しつつあるかどうかを巡って議論している。本当に減少しているとしたら、どうすればこの問題を是正することができるだろうか?
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「マヤ文明の入れ墨道具」「連星系の周りを奇妙な軌道で回る惑星」「近視のザトウクジラを取り巻く危険」「少数の富裕層が気候変動に及ぼす多大な影響」、他。
News in Japan
Free access
甘利俊一氏、アジム・スラーニ氏、キャロル・ギリガン氏に京都賞
2025年の京都賞は、人工知能に関する先駆的貢献を行った甘利俊一氏、哺乳類でゲノムインプリンティングを発見したアジム・スラーニ氏、「ケアの倫理」の新たな地平を開拓したキャロル・ギリガン氏に贈られる。
News in Focus
ディープマインド社が汎用科学AI「AlphaEvolve」を発表
AlphaEvolveは、既にAIチップの設計を改良したり数学の未解決問題に取り組んだりしているが、現時点では社外の研究者には公開されていない。
学術誌を買収してハゲタカに変える企業
数十の科学誌が買収された後、論文掲載料を値上げして、大量の論文を出版するようになっている。
メンデル遺伝学の百年来の謎がついに解明された
有名な市民科学者であったメンデルが研究したエンドウの7つの形質のうち未解明だった3つの形質について、その原因遺伝子が明らかになった。
数百本の論文が開示なしにAIを使用している
学術文献の至る所から、著者が開示なしにAIを使用していることを物語る証拠が見つかっている。こうした証拠は、時に跡形もなく消されてしまうことがある。
科学界の「ゴラム効果」が博士課程の学生を直撃
研究現場に渦巻く“縄張り意識” ― とりわけキャリア初期の研究者がその矢面に立たされていることが明らかになった。
数十本の生物医学論文の結果が再現できなかった
ブラジルの生命科学研究で頻繁に用いられる方法に注目したユニークな再現性検証プロジェクトが実施され、改革を求める声が沸き起こっている。
オープンAI社のチーフサイエンティストがAI研究の展望を語る
オープンAI社のモデル開発を率いるJakub Pachockiは、「AIモデルは新規性のある研究が可能」と語る。
NIHの助成金の更新はより革新的な成果につながる
研究資金の打ち切りは研究への集中を妨げ、研究の新規性を損なうことが調査から示唆された。
ヘビに200回かまれた男性の血液から抗毒素を作製
爬虫類マニアが持つ抗体と既存の薬剤を組み合わせて使用する治療法には、期待が寄せられる半面、倫理的懸念も浮上している。
レーザーでヒトの目を欺くことで作り出された全く新しい色
オロと呼ばれる「桁外れ」の彩度を持つ緑がかった色相は、研究に参加した5人以外は誰も見たことがない。
Features
科学のブレイクスルーは起こりにくくなっている?
研究者らが、「破壊的な科学」や「新規の科学」が減少しつつあるかどうかを巡って議論している。本当に減少しているとしたら、どうすればこの問題を是正することができるだろうか?
研究論文へのAI使用の倫理を巡り分かれる意見
Natureが5000人の研究者を対象とするアンケート調査を行った結果、研究論文の執筆や査読にAIを用いることが許容される場合や開示すべき事項について、対照的な見解が示された。
News & Views
帯状疱疹ワクチンは認知症の予防に役立つのか?
電子健康記録データの大規模解析から、帯状疱疹ワクチンは認知症を予防できる可能性が示唆された。だが、その仕組みは不明だ。
棒状構造を持つ宇宙初期の銀河
宇宙の歴史の初期に位置する銀河の観測で、その銀河が、その時期にはまだあり得ないと思われていた棒状の構造とガスダイナミクスを持つことが分かった。
がん化しやすい細胞では細胞周期が短い
ある種の細胞は、他の細胞種よりも腫瘍を形成しやすい。細胞周期の長さが、がん化しやすいかどうかの予測因子となることが分かった。
「面内」型のアヌレン金属錯体を実現
今回、平面環状炭化水素の中心に金属原子が結合した、独特な配位構造と電子構造を持つ新しいクラスの有機金属化合物が合成された。この化合物は、触媒反応や材料科学に応用できる可能性がある。
Advances
アリに学ぶ渋滞回避策
自動運転車時代の交通渋滞を回避するのにアリの戦略が役に立つ。
Where I Work
Cesária Huó
Cesária Huóは、ゴロンゴサ国立公園(モザンビーク)の保全生物学者。
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