2025年11月号Volume 22 Number 11
出生率低下の時代をどう生きる
世界中で急激な人口減少が起こっており、世界的な出生率の低下は労働力・社会保障・地域維持に影響を及ぼす。しかし、金銭的な支援の効果は限定的であり、育児制度の充実や移民政策、働き方改革など、少子化を前提とした社会設計と複合的な適応策を考えていく必要がある。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「働く肉球:圧力下で皮膚を守るタンパク質」「『悪魔の彗星』と地球の海に共通の起源」「チームプレーで個々の能力が上がるアリ」「変わる風向き:風力発電量が減少する理由」、他。
News in Focus
HIV mRNAワクチンがヒトで強力な免疫応答を誘発
初期臨床試験で、2種類のHIVワクチン候補のいずれかを接種された研究参加者の80%が、ウイルスタンパク質に対する抗体を産生した。
超加工食品の摂取が減量の妨げに
加工度の異なる食品を摂取した際の効果を比較する試験が行われた。
アセトアミノフェンはなぜ今も標準的な鎮痛薬なのか?
アセトアミノフェンには130年の歴史があり、非常に安全な薬の1つだが、疼痛や発熱をどう抑えるのかは、まだ不明な部分も多い。
地球観測データを地図化するグーグルの新しいAIモデル
このシステムで衛星データの処理にかかる時間を大幅に短縮できると研究者らは言う。
プレプリントサーバー汚染と戦う投稿管理者たち
プレプリントサーバーは、ペーパーミルやAIツールを利用したと思われる投稿論文の増加に直面している。
チョコレートの風味の「仕立て」は微生物が担っている
カカオ豆の発酵で働く微生物群集を操作することで、より魅力的な風味のチョコレートを作れるようになるかもしれない。
中国の積極的な人材招聘政策が科学界にもたらした影響
海外で研さんを積んだ多くの中国人研究者が、帰国後に手厚い待遇と地位を得ている。
デング熱のアウトブレイクは高温や降雨と同期している
疫学データの解析から、南北アメリカ大陸全域でのデング熱の季節パターンが明らかになった。
トランプ大統領令が研究助成金に関する強大な権限を政治任用者に付与
この動きにより研究助成金の査読という長年の伝統が破壊されるかもしれないと、科学者らは危機感を募らせている。
ウイルスが休眠がん細胞を呼び起こす
呼吸器感染症による炎症でがんが再発する可能性が、マウスの研究から明らかになった。
Features
査読システムをどう立て直すか
学術誌と研究資金配分機関は、逼迫(ひっぱく)する査読システムの実効性を高めようとさまざまな試みを行っている。
AI生成論文に潜む「剽窃」のリスク
AIが「新規」に生成した研究論文は出典を明示することなく他者のアイデアを利用しているのではないかという懸念について、研究者の見方は分かれている。
出生率の急落は人類滅亡の予兆なのか?
世界中で急激な人口減少が起こっており、今後数世代にわたる悪影響が予想されるが、適応することは可能だ。
Japanese Author
Free access
マウス胎仔の雄化に鉄を介したエピゲノム制御があることを発見!
哺乳類において、染色体がXY型の胎仔生殖腺を雄化するには、Sryの時期特異的な発現が必須となる。Sryの発現にはH3K9me2の脱メチル化が必要だが、その詳細なメカニズムは解明されていなかった。大阪大学大学院生命機能研究科の立花誠教授は、鉄の代謝と脱メチル化酵素の協調的な作用により、Sryの発現が活性化されることを突き止めた。
News & Views
死にゆく恒星がその深部の構造を明らかに
超新星爆発する少し前にその外側の層を取り去られていた恒星の超新星爆発が観測され、恒星の内部構造をのぞき見る貴重な機会になった。
AI支援によって実現した、濡れた表面でも機能する超接着性ゲル
生物が湿潤表面に体を固定するのに用いている接着タンパク質を手掛かりに、AI支援戦略によって、水中でも強い接着力を示すハイドロゲルが開発された。
Advances
ゴリラはトリュフを探す
昆虫を食べているとされた行動は、実はトリュフが目的だった。
Where I Work
Erasto Job
Erasto Jobは、TRí社(タンザニア・ダルエスサラーム)の技術者。
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