Perspective

アルツハイマー病のアミロイド仮説:新規治療薬から得られた新知見

Nature Reviews Drug Discovery 21, 4 doi: 10.1038/s41573-022-00391-w

アルツハイマー病(AD)のアミロイドβ(Aβ)タンパク質を標的とする多くの薬物が、臨床的有効性を示せていない。これに対して、4種類の抗Aβ抗体は、AD患者の脳からのアミロイド斑の除去に介在することが実証されており、そのうちの1つであるアデュカヌマブが、最近、米国FDAの迅速承認を受けた。その際には、アミロイド斑の減少が、代替エンドポイントに用いられた。この迅速承認の根拠およびこれらの抗体による臨床的有用性の程度をめぐっては、激しい議論が交わされている。本論文では、この議論に有益な情報をもたらすことを目的として、ADにおける2つの特徴的なタンパク質凝集体(Aβ斑とタウ神経原繊維変化)の時間的相互作用およびこれらのタンパク質凝集体と認知機能障害との関係という観点からAβを標的とする薬剤の臨床試験データを検討し、臨床成績に影響を与える可能性のある薬剤の性質の違いを特に取り上げる。これに基づき、我々は、Aβの病理変化がタウの病理変化を引き起こすこと、有意な臨床的有用性の存在を明らかにするためにアミロイド斑を低レベル(約20センチロイド)に減少させる必要があること、そして、アミロイドの除去から臨床的有用性が観察されるまでにタイムラグがあるという考えを提起する。我々は、治療薬候補によって脳からアミロイドを除去する速度が、臨床試験において臨床的有用性を実証する上で重要だと結論する。

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