Research Highlights

生体材料:損傷制御

Nature Nanotechnology 2018, 1018 doi: 10.1038/s41565-018-0287-8

心筋梗塞は、血管を塞ぐ血栓が形成され、心臓への血流が途絶えて虚血性障害が起こることで生じる。治療の第一選択は、抗凝固薬を投与して血栓の凝集したフィブリンを溶解し、血流を回復することである。しかし、心臓への血流が突然増大すると、虚血再灌流障害や心筋の繊維化が生じる可能性がある。

今回Mihalkoたちは、フィブリンを標的にして、抗凝血剤の組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)と、繊維化の原因となる細胞機構を阻害する小さな薬物分子のY-27632を放出するナノゲルについて報告している。このナノゲルは、さまざまな密度のポリマーメッシュ、小さな分子を閉じ込める高度に架橋されたコア、tPAを封入するより緩いシェルからなる。この構造によって、tPAを放出して血栓を溶解した後、Y-27632を送達することが可能になる。動物モデルに注射すると、このナノゲルは、損傷した心臓を標的にするとともに他の臓器にはほとんど蓄積されず、心臓機能の向上をもたらした。この結果は、左心室駆出分画率の増大、フィブリン沈着の減少、瘢痕組織形成の低下の観点から評価されている。

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