Brief Communication

ママのちょっとした助けで怖がらないことを学習

Nature Medicine 9, 8 doi: 10.1038/nn1733

幼いラットは母親がいるときは、不快な電気ショックと結びついていても不慣れなにおいに近づけるようになる。しかし一匹だけだとショックと結びついたにおいは何でも避けることを学習する。Nature Neuroscience誌8月号の論文で、母親が近くにいると子のストレスホルモンが減少することが明らかにされている。このホルモンは、恐怖に関連する脳領域の活動を低下させて嫌悪学習を妨げる作用に関係する。
 非常に幼い仔ラットは母親のそばをけっして離れず、この時期に母親のにおいに近づくことを学習する。仔ラットは約10日齢で巣を離れ始めるが、母親は3週齢まで世話をする。Regina Sullivanらは、この過渡期の間中、母親がいると仔はストレスホルモンであるコルチコステロンが減少し、恐怖学習の重要な脳領域である扁桃体の活性が低下することを証明した。仔の扁桃体にコルチコステロンを直接注入すると、母親がいた場合でもショックと結びついたにおいを避けることを学習した。
 したがって、母親の存在は仔にとって誘引学習と嫌悪学習の切り替えスイッチとして作用するらしい。母親が仔の正常な恐怖反応を無効にできることから、誤った子育てに伴う虐待的愛着や情緒障害に対する手がかりが得られるかもしれない、とSullivanらは示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度