Brief Communication

下宿がよければ態度もよい:新しい神経細胞は不要

Nature Medicine 9, 6 doi: 10.1038/nn1696

近年の研究により、脳領域の一部は成人になっても新たな神経細胞を作り続けることが明らかになっている。これら新生細胞は、数が増えるという利益は考えられるものの、脳機能への重要性はまだはっきりしていない。Nature Neuroscience誌6月号の新しい研究によると、成体マウスでは行動の改善と神経形成の増加の因果関係は見いだされなかった。
 特別製のケージ内で遊具や社会的相互作用を与えて飼育した実験用マウスは、通常のケージで飼育したマウスより不安感が少なく、よく学習する。さらに、脳内の学習や記憶に重要な領域である海馬で形成される新たな神経細胞が多い。
 Rene Henらは、成体マウスの海馬にX線を照射して神経形成を阻害したのち、以前より恵まれた環境で飼育してみた。6週間後、照射マウスの示した学習の改善、不安様行動の減少は未照射マウスのものと同程度であった。このことは、行動に対する影響が海馬の新生神経細胞の増加のせいではないことを示唆する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度