Brief Communication

コカイン断薬の神経への影響

Nature Medicine 9, 5 doi: 10.1038/nn1687

薬物断薬後にどの程度再発しやすいかは、薬物嗜癖治療の中心となる問題である。薬物の使用だけでなく、薬物への耽溺を思い出すようなきっかけにさらされることでさえ、再発の引き金を引くことがある。Mu-ming PooらはNature Neuroscience誌5月号で、断薬中にあるきっかけで起こる薬物探索行動の原因となるかもしれない脳の仕組みについて述べている。
 Pooらは薬物中毒に関係した報酬と強化にかかわることが知られている腹側被蓋野(VTA)と呼ばれる脳領域を調べた。前もって5〜7日にわたり毎日コカインを注射されたラットは、コカイン断薬中にドーパミン放出ニューロン間のシナプスの感受性が刺激強度の増加に対し高まっていた。そのため弱い刺激であってもニューロン応答増強の長期持続を引き起こせることがわかった。このような可塑性の増加にはBDNFという増殖因子が必要であった。BDNFは以前、断薬後の薬物探索行動と関連づけられている。
 薬物への渇望と再発には、薬物に関連したきっかけに応答する報酬シグナルの特異的な増強が関係するのかもしれない。Pooらの結果からは、そのような増強を考慮しうる機構が示唆される。

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