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脂肪との戦い

Nature Medicine 9, 2 doi: 10.1038/nn1626

小脳内の簡単な物質の量が、体重の調節に重要な働きをする可能性があるとの報告が、Nature Neuroscience2月号にある。
 脳と腸との間の複雑な交信は、食物の消費や体重を調節している。脳における摂食と体重増加減少の主要な調節因子は、視床下部にある神経細胞群である。この脳領域に多量の脂肪酸があると摂食をやめるシグナルになるとの報告がなされている。今回のLuciano Rossettiらによる新しい研究では、ウイルスベクターを用いて視床下部のこの領域でマロニル-CoAの量を減らした。マロニル-CoAは脂肪酸のエネルギーへの分解を阻害するので、マロニル-CoAの減少は慢性的な低脂肪酸量を引き起こす。これが実験動物に過食をもたらすが、おそらく、微妙な均衡を保っていた脳の栄養センサーのリセットによるのだろう。
 これらの結果は、視床下部でのマロニル-CoA量の上昇が体重過多の患者の治療に有益かもしれないと示唆している。したがって、マロニル-CoAを生産する酵素は肥満抵抗薬の標的として有望である。

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