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脊髄の再生を促進

Nature Medicine 9, 2 doi: 10.1038/nn1622

成人の神経系は損傷から回復する能力がごくごく限られており、脊髄損傷の治療をきわめて難しくしている。Nature Neuroscience誌2月号の論文に、β2型レチノイン酸受容体(RARβ2)がラット成体の脊髄にある軸索の再生を促進し、脊髄損傷からの機能回復を増進する可能性があるとの報告がある。傷つけられた場合、胚のニューロンはすぐに成長し直すが、この能力は成体では抑制されていて、抑制の一部は成体中枢神経系にある阻害因子のためとされている。傷ついた感覚神経は損傷部位で脊髄から遠ざかる向き(中枢神経系から外側)に再生をしはするのだが、脊髄の中枢神経系と末梢神経系の間の移行帯で再生を止めてしまう(この障壁は、後根入口帯[dorsal root entry zone; DREZ]という)。Liang-Fong Wongらは、ラットでレンチウイルスを用いてRARβ2を成体感覚ニューロンに送り込み、それから脊髄を傷つけた。ラットはさまざまな運動作業に目覚ましい改善を示し、体についた粘着テープをはがし、餌のペレットに手を伸ばしてつかみ、水平に置いたはしごの梁を横切るなどをこなした。また、DREZを通る感覚ニューロンの損傷軸索は再生しており、その増加は機能の回復と相関していた。この研究は、RARβ2が成体の損傷ニューロンの再生を助けることを論証しており、脊髄再生療法の新しい可能性をひらくものである。

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