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後悔を避ける脳機能

Nature Medicine 8, 9 doi: 10.1038/nn1514

内側眼窩前頭皮質とよばれる脳の領域は、意思決定に際して後悔のような情動の影響を取り次ぐことが、Nature Neuroscience誌9月号の機能的画像法による研究で明らかになった。確実に50ドルもらうか100分の1の見込みで5000ドルを手にするか選択を提示された場合、普通は確実なほうを選ぶだろう。しかし、賭けに勝つか負けるかが後でわかる場合には、あえて危険性の高い選択肢をとる傾向にある。経済学者はこの行動を、大きな懸賞を逃してしまったと知って生じる後悔を回避する願望に帰している。
 この研究では被験者に2つの賭けのうち1つを選ばせた。2つのどちらかは負ける危険性が高い。研究者はいくつかの試行については両方の賭けの結果に対する情報を与えて、後悔を誘うようにした。実験が進むにつれ、被験者は後悔する可能性を減らすよう選択を修正し、また、内側眼窩前頭皮質と扁桃体の活動が増加した。脳のこの活動パターンは悔やまれるような選択をした後(選ばなかった危険な賭けのほうがうまくいったとき)にも見られた。この活動パターンは被験者の“選択”がコンピュータで決定されたときにはなかったので、これらの領域の活動には個人の責任能力が重要なことが示唆された。以前の研究で眼窩前頭皮質を損傷した患者はこのような「ギャンブル」課題に適切な選択を行うのが困難なことが明らかにされており、この結論が支持される。

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