Letter

白血病の解明を進める

Nature Medicine 8, 9 doi: 10.1038/ncb1464

CALM-AF10転座に関連する2種類の白血病を引き起こす過程についての重要な手がかりが報告された。  染色体の一部が切れて別の箇所に移動する「転座」が起こると、2種類の遺伝子の産物からなる融合タンパク質が作り出されることがある。こうした融合タンパク質は、 遺伝子の「誤った制御」を引き起こすことが多く、これが白血病につながる可能性がある。白血病で転座がもっとも多く見られる遺伝子はMML(mixed lineageleukaemia)で、転座が起こった際に融合タンパク質を作る相手の1つがAF10である。T細胞性急性リンパ芽球性白血病と急性骨髄性白血病の患者では、AF10は、また別のタンパク質CALMと融合することも知られている。しかし、CALM-AF10の融合が病気の原因となるのかどうかはわかっておらず、この融合が白血病を引き起こす仕組みの方もほとんど解明されていなかった。Y Zhangたちは、CALM-AF10融合がマウスモデルで白血病性形質転換を引き起こすのに必要であり、これだけで形質転換には十分であることを明らかにしている。Zhangたちは、融合がHoxa5遺伝子の異常な発現につながり、さらにHoxa5の発現開始が融合タンパク質によって誘導される白血病性形質転換に必要であることを見いだした。また、クロマチンを修飾するある酵素が融合タンパク質による遺伝子発現開始に重要な役割を持つことも突き止めた。  これらの知見が、有効な新治療法につながるかどうかはまだわからないが、癌の進行時に異常を呈する基本的過程の解明が、新たな治療法への第一歩であることは明らかだ。

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