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嚢胞性繊維症:慢性的な肺感染の原因を解明

Nature Medicine 8, 9 doi: 10.1038/ncb1456

嚢胞性繊維症の場合にうまく機能しなくなる嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)が、細胞内の分解を行う小区画の酸性度を調節していることを、D Nelsonたちが明らかにした。酸性度がうまく調節されないと、細胞の細菌を殺す機能が損なわれるのである。  嚢胞性繊維症患者の肺での細菌感染は慢性的な炎症を引き起こすことがあり、これによって組織が損傷を受け、この病気の症状が悪化する。感染した細菌を細胞が排除する機構の1つは食作用であり、これはマクロファージという特殊化した細胞が細菌を取り込み、酸性度の高い細胞内区画で消化するという過程である。Nelsonたちは、塩素イオンチャネルであるCFTRが、肺で特異的に機能している種類のマクロファージ細胞に存在することを見いだした。遺伝子工学的にCFTRを発現しないように操作したマウス由来のマクロファージや、CFTRを特異的に阻害したマクロファージを使い、 CFTRがないと細胞内の消化にかかわる小区画内部の酸性化が進まなくなることがわかった。つまり小区画内はアルカリ性のままで、細菌は増殖・分裂を行うことができるのである。  マクロファージは生体の防御機構に重要な役割を果たしている。Nelsonたちが明らかにしたようにマクロファージの機能が損なわれることは、嚢胞性繊維症患者で見られる慢性感染の原因解明につながりそうだ。

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