Article 共感の痛い一面 2002年7月1日 Nature Medicine 8, 7 doi: 10.1038/nn1481 映画を見る人なら知っていることだが、誰かがけがをするのを見ると強い情動的な反応が起こることがある。他人の痛みに対する共感は、情動以上に個々の筋肉の制御にまで及ぶことがNature Neuroscience誌7月号の論文で報告されている。他人がそこに針を刺されるのを見て被験者の特定の筋肉の興奮性が低下したことから、人は文字どおりといってよいほど他人の痛みを感じるのかもしれない。 Salvatore Agliotiらは経頭蓋磁気刺激(手術や外部電極を用いず脳内の電場変化を誘発する方法)により皮質の運動制御野を刺激した。その間、被験者らは誰かの手や足、あるいはトマトにピンを刺すビデオを見せられた。他人の痛みの推定強度をより大きく評価した被験者ほど筋肉の興奮性に強い影響が見られた。しかし他人の痛みに対する感情的不快さの評価と、筋肉の興奮性への影響に相関はなかった。人間の痛みにおける社会的側面が、神経処理の非常に基本的な感覚運動レベルにさえ及んでいるとAgliotiらは結論づけている。 Full text PDF 目次へ戻る