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月経周期中の脳の変化

Nature Medicine 8, 6 doi: 10.1038/nn1469

月経周期(性周期)に対応したホルモン変動は、脳や行動に顕著な影響を及ぼすことがある。周期の段階により、神経細胞が発現するGABA(抑制性神経伝達物質)受容体の型が異なることが、Nature Neuroscience誌6月号に報告された。このことは、これら変動を説明する分子基盤の一部となるかもしれない。
てんかん患者の女性の78%までもがプロゲステロン減少期に発作が起こりやすい、いわゆる月経随伴性てんかんである。月経がある女性の5%は月経前不機嫌性障害(PMDD)であり、月経前の1週間前後にひどい不安感や抑うつを経験する。エストロゲンとプロゲステロンは脳内の興奮性、抑制性シグナル伝達両方に作用するが、発作頻度と不安感におけるこれらの変動の仕組みは不明であった。
Istvan Modyらは、マウスの海馬(発作の発生に重要な脳内部位)の神経細胞が、性周期の低プロゲステロン濃度期に抑制性GABA受容体の特定の1種類のサブタイプ以外のものを多く発現することを見いだした。これは神経情報伝達の“緊張性”あるいは持続性抑制とよばれる劇的な低下を引き起こし、それに伴い発作頻度と不安感は増加した。高プロゲステロン期には逆のパターンが見られ、GABA受容体のこのサブタイプが強く発現し、緊張性抑制が増加し、発作頻度が減少した。したがってこれらGABA受容体の変化は、月経随伴性てんかんとPMDDに見られる、月経周期が発作や不安感に及ぼす影響に応じたものかもしれないと示唆される。

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