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うつ病にかかわる脳回路
Nature Medicine 8, 6 doi: 10.1038/nn1463
うつ病発症の危険増加は、脳内物質セロトニン(気分の調節にかかわるとされる)の量を制御する遺伝子のある変異と連鎖している。この変異をもつ人はうつ病を発症しやすく、特にストレスやトラウマの多い人生経験をすると顕著である。Daniel Weinbergerほかは、うつ病の病歴のない健康人100人以上の脳画像を調べた。危険度の高い変異遺伝子をもつ人では、脳容積が減少し、脳の抑制的な情動応答の制御に重要である可能性をもつ領域間の相互作用が変化していた。
これまでの画像化研究では、うつ病患者の脳に見られる変化を発見してはいたものの、これらの変化がうつ病を原因とするものか、発病以前から存在したものかは明らかでなかった。今回の新しい結果は、遺伝子が脳の構造と機能を形成し、ひいては感情にかかわる病気についての気質や弱さの面で個々人のもつ差異に貢献する可能性を示唆している。