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SUMOが腫瘍の転移スイッチを切り替える
Nature Medicine 8, 6 doi: 10.1038/ncb1415
転移は、がん細胞が腫瘍原発部位から広がって体内の別の場所に続発性腫瘍を形成することをいう。この過程を調節する仕組みが解明されれば、転移性腫瘍の新しい治療方法を開発する助けとなるだろう。Baekたちは以前に、転移防止に働く遺伝子であるKAI1の発現を抑えるのにreptinというタンパク質が重要であることを明らかにしている。
今回彼らは、もう1つのタンパク質SUMOがreptinに結合するとreptinの機能が切り替えられること、つまりSUMOはKAI1が発現しなくなるように働くことを報告している。これは、KAI1遺伝子の発現を停止させる別のタンパク質群とreptinとの相互作用をSUMOが促進するからである。一方、reptinからSUMOを取り除くと、KAI1の発現が活性化する。また、SUMOのreptinへの結合を妨げると、腫瘍細胞の転移能力が変化することもわかった。
この研究は、転移に影響を与える新しい因子を明らかにしたもので、この因子は治療滴下移入の標的となると考えられる。