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幹細胞治療の痛みを軽減

Nature Medicine 8, 3 doi: 10.1038/nn1405

幹細胞移植が衰弱性の脊髄損傷からの回復を保証するかは、保留すべきだ。Nature Neuroscience誌3月号の論文では、ある種の脊髄損傷患者にまつわる問題をこの処置が悪化させると報告している。

これは異痛症(アロディニア)とよばれる症状で、ふつうは痛みを感じない刺激を痛いと感じてしまう。論文では、移植した幹細胞の生産するある種の細胞を遺伝子移入によって制御すると、この副作用を防げる可能性を示している。

Christoph Hofstetterらは脊髄に損傷のあるラットの回復状態を観察し、ほかのラットの脊髄からとった神経幹細胞を受け取ったラットが、最終的にいくつかの運動機能を回復することを発見した。ただし、このラットは前肢に異痛症も発症しており、冷たさや圧力といったふつうの刺激に対し痛いかのように応答した。こうした感覚の増幅は、この動物で軸索が異常に伸びたことを示唆していた。

別のラット群には、ニューロゲニン2の遺伝子を移植前に移入しておいた幹細胞を与えた。この遺伝子は、幹細胞が星状細胞(アストロサイト)という脳細胞への分化を阻害する。このラット群は回復がかなりよく、異痛症を示さず異常な軸索伸長も少なかった。

これらの結果は、幹細胞移植が脊髄損傷の処置に役立つ反面、深刻な副作用の原因となることを示しており、ヒトの臨床治療計画には熟慮すべきであろう。

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