Letter

HIV感染の仕組みを説明

Nature Medicine 8, 2 doi: 10.1038/ncb1352

HIV-1感染によるエイズ発病の仕組みについての考察がNature Cell Biology2月号に発表されている。
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)は、感染者の体内のT細胞と呼ばれる重要な免疫細胞の数を大幅に減らすので、その結果免疫系が弱体化してしまう。T細胞はHIVウイルスのタンパク質 Vprによって破壊される。Vprは、細胞死や免疫抑制、細胞増殖の阻害など、多様な細胞機能を制御する。Vprがこうした作用をおよぼす方法の1つが、T細胞のステロイドホルモン受容体(GR)への結合である。
ペンシルベニア大学のDB Weinerたちは、VprがGRへ結合することによって、遺伝子発現の重要なコアクチベーターであるPARP-1をその標的に近づけないようにし、T細胞の生存に重要な経路を遮断することを明らかにした。VprはPARP-1をGRに結合させ、それによってPARP-1が生存に重要な遺伝子の発現を活性化できないように働く。重要なのは、GRが本来の結合相手であるステロイドホルモンによって活性化されている場合は、PARP-1のGRへの結合が起こらないという点である。これはHIV-1に感染すると、GRとPARP-1の結合がウイルスのタンパク質であるVprによって直接引き起こされることを示している。T細胞の数を大幅に減らし、その結果免疫系に影響がおよぶ仕組みが分子レベルで解明されれば、HIV-1に対する治療的介入への新たな道が開けるかもしれない。

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