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コレラ:臨床サーベイランスシステムはコレラ流行地域における感染負荷の実態を不明瞭にする

Nature Medicine 30, 3 doi: 10.1038/s41591-024-02810-4

コレラの伝播と負荷は、主に受診に基づくサーベイランスによって把握されているが、この方法では流行の実態が不明瞭になり、感染負荷の推定に偏りが生じ、コレラ予防対策の効果が限定的になってしまいかねない。血清学的サーベイランスは感染症をモニタリングするための補完的手法だが、血清学的に推定される感染状況と、医療的介入を要する疾患発生(免疫学的・行動学的・臨床的要因に基づく)との関連性はまだ十分に理解されていない。我々は、コレラが風土病であるバングラデシュの地域において、受診に基づくサーベイランス、医療の利用状況、および長期的な血清学的データを統計モデル化することによって統合し、この一連の事象を明らかにした。血清学的な軌跡と症候性コレラ発生の時系列を再構築したものを組み合わせることで、コレラ菌(Vibrio cholerae)O1感染発生率は、年間で人口1000人当たり535人(95%信頼区間514〜556)であり、罹患率は年齢層が上がるにつれて増加すると推定された。受診に基づくサーベイランスだけでは感染者数が過小評価されており、報告された症例と感染時期の間には一貫した相関が見られなかった。感染者のうち、症状が出たのは3280人中4人で、サーベイランスシステムを通じて報告されたのはそのうちの1人だけだった。これらの結果は、第7次コレラパンデミックの感染中心地(年間で調査集団の50%以上がコレラ菌O1に感染していた)におけるコレラ伝播の動態と負荷を理解する上で役立つ知見となり、また、臨床サーベイランスデータのみへの依存では、疾病負荷や感染リスクの見方が偏る可能性を浮き彫りにしている。

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