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心筋梗塞:心筋トロポニン濃度を用いた機械学習による心筋梗塞の診断

Nature Medicine 29, 5 doi: 10.1038/s41591-023-02325-4

心筋梗塞の診断ガイドラインでは、心筋トロポニン閾値の固定した値が推奨されているが、トロポニン濃度は年齢、性別、併存疾患、発症後の時間経過の影響を受ける。我々は診断を改善するために、診察時あるいは一連の検査における心筋トロポニン濃度と臨床的特徴との統合を行い、個々の患者が心筋梗塞を起こす確率に相当するCoDE-ACS(Collaboration for the Diagnosis and Evaluation of Acute Coronary Syndrome)スコア(0~100)を算出する機械学習モデルを開発した。このモデルを1万38人(女性は48%)の患者データに基づいて訓練し、その性能を7つのコホートからなる1万286人(女性は35%)の外部データを用いて検証した。CoDE-ACSは、心筋梗塞の識別に優れており(曲線下面積0.953、95%信頼区間0.947~0.958)、全てのサブグループで診断性能は良好で、心筋梗塞の可能性が低いことを診察時に特定できた患者の数は、固定の心筋トロポニン閾値を用いた場合よりも多く(61%対27%)、その陰性適中率は同等で、また、心筋梗塞の可能性が高いと確認できた患者の数は少なかったが(10%対16%)、その陽性適中率は高かった。心筋梗塞の可能性が低いと判断された患者は、心筋梗塞の可能性が中程度あるいは高いと判断された患者よりも、患者の診察から30日後(0.1%対0.5%および1.8%)と1年後(0.3%対2.8%および4.2%、どちらもP < 0.001)の心臓死の割合が低かった。CoDE-ACSの臨床意思決定支援システムとしての使用は、入院を減らし、患者と医療提供者に大きな利益をもたらす可能性がある。

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