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大腸がん:腫瘍、免疫、マイクロバイオームを統合した大腸がんアトラス

Nature Medicine 29, 5 doi: 10.1038/s41591-023-02324-5

広範な追跡情報のあるマルチオミクスのがんデータセットがないため、臨床転帰の正確なバイオマーカーの特定が困難になっている。我々は今回のコホート研究で、原発性大腸がん患者348人から採取した新鮮凍結試料について包括的なゲノム解析を行った。この解析には、腫瘍およびマッチさせた健常大腸組織のRNA、全エキソーム、T細胞受容体(高深度)、細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列解読が含まれており、さらにマイクロバイオーム特性解析のために腫瘍の全ゲノム塩基配列解読による補完を行った。ICR(Immunologic Constant of Rejection)と呼ばれる1型ヘルパーT細胞や細胞傷害性の遺伝子発現シグネチャーは、クローン増殖して腫瘍に豊富に集まったT細胞クローンの存在を捉えることができ、コンセンサス分子サブタイプ(CMS)やマイクロサテライト不安定性による分類といった予後に関する通常の分子バイオマーカーよりも優れていた。遺伝学的な免疫編集の定量化(予想されるネオアンチゲンの数よりどの程度少ないかで規定)によって、さらにその予後値の精度が上がった。また、Ruminococcus bromiiによって誘導され、良好な転帰と関連するマイクロバイオームシグネチャーが見つかった。我々は、マイクロバイオームシグネチャーとICRを組み合わせて、生存率が非常に高い患者グループを特定するための複合的なスコア(mICRoScore)を開発し、その有効性を確認した。このマルチオミクスデータセットは公開されており、大腸がんの生物学的特性の理解を深めるための情報資源となることで、個別化治療法の発見に役立つだろう。

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