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黒色腫:治療抵抗性黒色腫における多臓器の状況

Nature Medicine 29, 5 doi: 10.1038/s41591-023-02304-9

転移と現行治療法の失敗が、皮膚黒色腫患者の最もよく見られる死因である。背景にある遺伝的全体像とトランクリプトームの全体像を明らかにするために、本研究ではMAPK阻害剤(MAPKi)または免疫チェックポイント阻害剤(ICB)、あるいはそれらの併用療法の後、抵抗性獲得に起因した死亡の11例の迅速剖検から、多臓器転移腫瘍と腫瘍隣接組織の解析を行った。どの治療法でも、免疫回避や治療に対する交差抵抗性の機構を示唆する共通の遺伝的変化が誘導されていた。また、クラスターを形成していない大規模な欠失、逆位、染色体間転座が再編成の主体となっていた。独立した黒色腫コホートから得られた345人の無治療患者と、35人の患者(患者をマッチさせた治療前腫瘍試料および治療後の抵抗性獲得腫瘍試料)のデータ解析に基づき、クロスコホート解析を行ったところ、MAPKiとICBはそれぞれ、無治療の腫瘍と比較して剖検で増加していた遺伝子増幅と遺伝子欠失の原因であることが明らかになった。剖検コホートから、固有/後期の変異・構造バリアントでは変異シグネチャーや再構成シグネチャーの変化が見られ、MAPKiは相同組換え、ミスマッチ、塩基除去修復の欠損のシグネチャーに明らかに選択的に見られるようになった。トランクリプトームのシグネチャーや、腫瘍に隣接するマクロ環境とのクロストークからは、臓器特異的な複数の適応経路が候補に上った。免疫系の構成を調べると、免疫砂漠(immune desert)に典型的なCD8+とマクロファージが偏っている状態、T細胞疲弊、2型免疫の特徴が明らかになった。治療抵抗性黒色腫についての今回の多臓器解析は、治療戦略を改善する可能性のある予備的知見を提示している。

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