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肥大型心筋症:高効率なin vivoゲノム編集によるマウスでの肥大型心筋症の予防

Nature Medicine 29, 2 doi: 10.1038/s41591-022-02190-7

心筋ミオシン重鎖の優性(顕性)病原性ミスセンスバリアントは、肥大型心筋症(HCM)の原因となる。この疾患は今のところ治療法がなく、脳卒中や心不全、心臓突然死のリスクを上昇させる。本研究では、アデノ随伴ウイルス(AAV)9ベクターを用いて送達するアデニン塩基エディター(ABE8e)と強力型Cas9ヌクレアーゼという2つの異なる遺伝子治療法が、HCM病原性バリアントであるミオシンR403Qをヘテロで持つマウスで、HCM発症を予防するか否かを評価した。(遺伝子サイズが大きいため)2つに分けたRNA誘導型ABE8eを各々含むデュアルAAV9の単回投与は、心室心筋細胞の70%以上で病原性バリアントを修正し、正常な心臓の構造と機能を持続的に維持させた。追加投与は、心房での編集を増加させたが、バイスタンダー編集も増加した。RNA誘導型Cas9ヌクレアーゼのAAV9送達は、病原性対立遺伝子を効率よく不活性化したが、容量依存的な毒性も見られたため、健康被害をもたらさないようにするためには狭い治療濃度域が余儀なくされる。今回の前臨床研究は、病原性バリアントを修正またはサイレンシングすることにより、HCMの発症を予防する単回投与遺伝子治療の大きな可能性を実証している。

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