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がん免疫学:複数の腫瘍タイプでの免疫療法への応答と関連付けられたT細胞回復力モデル

Nature Medicine 28, 7 doi: 10.1038/s41591-022-01799-y

がん免疫療法では飛躍的な進展があったにもかかわらず、ほとんどの腫瘍反応性T細胞は、固形腫瘍中ではその免疫抑制性の環境のために持続的に活性を発揮することができない。今回我々は、トランスフォーミング増殖因子β1、TRAIL(tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand)、プロスタグランジンE2などの免疫抑制シグナルに対して回復力のあるT細胞シグネチャーを、単一細胞トランスクリプトームデータを用いて見つけ出すための計算モデルであるTres(tumor-resilient T cell)を開発した。免疫チェックポイント阻害剤を投与された患者(n = 38)、キメラ抗原受容体T細胞療法の注入製剤を投与された患者(n = 34)、キメラ抗原受容体T細胞に対する製品化前試料または腫瘍浸潤リンパ球による療法を受けた患者(n = 84)の治療前腫瘍から取得したバルクT細胞トランスクリプトームデータを用いて、Tresは黒色腫や肺がん、トリプルネガティブ乳がん、B細胞悪性腫瘍での免疫療法に対する臨床応答を高い信頼性で予測した。さらに、疲弊しにくいT細胞の最上位ネガティブマーカーとしてFIBPがTresによって見つかった。FIBPの機能はほぼ不明である。マウスとヒトドナーのCD8+ T細胞でFIBPをノックアウトすると、in vitro共培養中でT細胞によるがんの殺傷が大幅に増強された。さらに、マウスT細胞でのFibpノックアウトは、B16腫瘍モデルでの養子細胞移植のin vivoでの有効性を向上させた。FibpノックアウトT細胞ではコレステロール代謝の低下が見られ、これはエフェクターT細胞の機能を阻害する。これらの結果は、固形腫瘍でのT細胞の有効性のバイオマーカーや免疫療法の治療標的候補を見つけ出すのに、Tresが有用であることを実証している。

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