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喘息:メタボロームプロファイリングで明らかになった、喘息のコルチコステロイド吸入療法が原因の広範な副腎機能抑制

Nature Medicine 28, 4 doi: 10.1038/s41591-022-01714-5

喘息のオミクスに基づく精密医療の可能性を理解するための好機が、大規模なメタボロームプロファイリングを用いることで新たにもたらされた。本研究では、4つの別々のコホートに属する1万4000人を超える患者のデータを用いて、広く見られる喘息の患者で17種のステロイド代謝物のレベルが有意に低下していることを突き止め、それぞれ独立に再現性を確認した。こうしたステロイドレベルは、医薬品使用とは関係なく、全ての喘息症例で低下していたが、最大の低下は吸入コルチコステロイド薬(ICS)の投与に関連していて、これは4年間の低用量ICS臨床試験で確認された。ICS投与がステロイドレベルに及ぼす影響は用量依存的だったが、低用量ICS投与でも有意な低下が見られた。電子診療記録の情報を用いて、ICSによる治療を受けた喘息患者では、ICSによる治療を受けていない喘息患者および喘息に罹患していない患者と比べると、コルチゾールレベルが1日を通して24時間にわたってかなり低下していることが分かった。また、ICSの投与を受けた喘息患者では、ICS投与を受けていない喘息患者と比較すると、倦怠感と貧血の有意な増加が見られた。従って、ICS投与を受けた喘息患者での副腎機能抑制は、従来考えられていたよりも大きな公衆衛生上の問題になる可能性がある。ICS投与を受けた喘息患者でのコルチゾールの定期的なモニタリングは、副腎機能抑制の有害な影響を最小限にすることと、その一方でICS投与という確立された治療法の利益を十分に利用することの間で最適なバランスを取るために必要である。

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