Analysis

糖尿病薬のリスク評価:チルゼパチドによる心血管事象のリスク評価:事前規定メタ解析

Nature Medicine 28, 3 doi: 10.1038/s41591-022-01707-4

チルゼパチドはGIP受容体およびGLP-1受容体の両方に作用するデュアルアゴニストであり、2型糖尿病(T2D)と肥満の治療に向けた週1回投与薬として開発が進められている。その一環として、チルゼパチドによる心血管系への影響の評価が求められている。今回の心血管系に関する事前規定メタ解析は、チルゼパチドT2D臨床開発SURPASSプログラムからの投与期間が26週以上の7つの無作為化対照試験を全て含んでいる。このメタ解析の事前に規定した主要目的は、チルゼパチド併合群と対照群間での、主要な有害心血管事象(MACE-4)を構成する4成分(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)が最初に発生するまでの時間の比較とした。治療を固定効果とし、試験レベルの心血管リスクを層別化因子とする層別コックス比例ハザードモデルを用いて、チルゼパチド群の対照群に対するハザード比(HR)と信頼区間(CI)を推定した。チルゼパチドを投与された4887人の被験者と、対照群の2328人からのデータが解析された。全体として、142人の被験者(心血管リスクの高い試験から109人、心血管リスクの低い6つの試験から33人)で、少なくとも1度MACE-4事象が起きた。チルゼパチド群の対照群に対するHRは、MACE-4では0.80(95% CI、0.57~1.11)、心血管死では0.90(95% CI、0.50~1.61)、全死因では0.80(95% CI、0.51~1.25)だった。どのサブグループでも効果が変化した証拠は観察されなかったが、心血管リスクの高い被験者では根拠が強力といえる。チルゼパチドは、T2D患者で対照群に比べて主要な心血管事象のリスクを上昇させなかった。

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