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心代謝性疾患:心代謝性疾患スペクトラムのマイクロバイオームおよびメタボロームの特徴

Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-022-01688-4

非感染性疾患(NCD、感染性ではない疾患の総称)を調べる従来のマイクロバイオーム解析やメタボローム解析は、研究結果の主要な交絡因子(共通の状態、発病前の状態、共存症、あるいは多剤服用など)には十分な注意を払ってこなかった。今回我々は、虚血性心疾患(IHD)について、IHDの病因が長引きやすいことを考えると他の方法では実行困難と思われる経時的研究を忠実に映し出すような研究デザイン、すなわち疾患発症、治療のエスカレーション、治療への応答を、長い時間をかけて概括する研究デザインを使用した。我々は、健常者、代謝異常による病的状態(肥満や2型糖尿病)だがIHDだとはっきり診断されていない患者、および3つの異なる臨床段階のIHD患者(急性冠症候群、慢性IHD、心不全を伴うIHD)を含む1241人の中年ヨーロッパ人を集め、参加者のフェノーム、腸のメタゲノム、血清と尿のメタボロームの特徴を詳しく調べた。服薬とライフスタイルの影響を調整した後に、IHD患者と健常者を区別するマイクロバイオームおよびメタボロームの特徴の約75%が、代謝異常を示す参加者で見られることが分かった。これは腸のマイクロバイオームとメタボロームの主な変化が、IHDの臨床的発症のかなり以前から始まる可能性を示唆している。我々はさらに、マイクロバイオームおよびメタボロームのシグネチャーを、前駆期の代謝異常に関連するもの、一般的なIHDあるいはIHDの3つのサブタイプに特異的なもの、もしくはIHDのエスカレーションあるいはデ・エスカレーションに関連するものに分類した。特定のIHDマイクロバイオームおよびメタボロームの特徴に基づく判別分析は、IHD患者と健常者あるいは代謝的にマッチする参加者を、従来のリスクマーカーと比べてよりよく区別できる可能性があり、これらの特徴の病態生理学との関連を示している。

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