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インフルエンザウイルス:インフルエンザウイルスH2のヘマグルチニン内の単一アミノ酸残基がH2ワクチン接種により誘導されるB細胞応答の交差性を増強する

Nature Medicine 28, 2 doi: 10.1038/s41591-021-01636-8

インフルエンザのヘマグルチニン(HA)幹部上の保存されたエピトープは広範な活性を持つ中和抗体を誘導することから、ユニバーサルワクチン戦略の標的として関心を集めている。HA幹部特異的エピトープに対するこのような抗体応答は、ヒトではHAサブタイプのH1とH5について詳しい特性解析が行われている。H2N2インフルエンザウイルスが流行したのは50年前のことで、現在は広範な免疫がないためにパンデミック(世界的大流行)を起こす脅威となっているが、H1とH5とは違って、H2 HAの幹部にはアミノ酸残基Phe45HA2が存在し、これが、これまでに特性解析されたHA幹部結合抗体と立体構造的に衝突することが予測される。我々は、このPhe45HA2の影響を知るために、2つの第1相臨床試験のpost hoc解析でHA幹部特異的B細胞応答を比較した。1つはH2フェリチンナノ粒子免疫原によるワクチン接種試験(NCT03186781)であり、もう1つは不活性化H5N1ワクチンによる試験(NCT01086657)である。H2曝露歴のない被験者では、B細胞応答の大きさは同程度だったが、H2により誘導されたHA幹部結合B細胞は、H5により誘導されたHA幹部結合B細胞よりも広範な交差反応性を示した。しかし、小児期にH2曝露歴のある被験者では、H5により誘導されたHA幹部結合B細胞も高い交差性を示し、これは50年前に形成された記憶B細胞のリコールを示唆している。以上より、HA免疫原の1残基の違いが、広範な中和活性のある記憶B細胞の樹立と増幅に変化を与える可能性が考えられる。これらのデータは、HA幹部に基づいたユニバーサルインフルエンザワクチン戦略に影響を及ぼすものである。

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