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遺伝子治療の臨床試験は、挫折するものが多いにもかかわらず、記録的な数に達している

Nature Medicine 27, 8 doi: 10.1038/s41591-021-01467-7

ハンチントン病に対する遺伝子治療が最近中止となったことは、患者には大変な衝撃だった。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)薬のトミネルセンは、変異体であるハンチンチンタンパク質をコードするmRNAに結合し、これを細胞によって分解させる。トミネルセンは第1/2相試験を速やかに通過し、安全であって、ハンチンチンのレベルを低下させたため、第3相試験が開始されたのだが、患者のリスクと利益を考慮した結果、投与が途中で中止された。米国の治験データベースにはほぼ5000件の遺伝子治療が登録されており、安全性や有効性に関する疑念が度々取り沙汰されるにもかかわらず、なお急増中である。現在、遺伝子治療で問題になることが多いのは、遺伝子の送達に関わるベクターであり、挿入変異リスク、免疫原性や導入効率の他に長期的な安全性についての懸念が確認されている。失敗の原因となりやすいのは、アデノ随伴ウイルス(AAV)の染色体組み込み部位がランダムなことだが、研究者たちは、遺伝子の送達に脂質ナノ粒子を用いたり、あるいは長期の安全性を監視したりすることで、ベクターについて克服できない問題はないだろうと、すこぶる楽観的に構えているのである。

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