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筋萎縮性側索硬化症:過剰なスフィンゴ脂質合成によって引き起こされる小児期発症筋萎縮性側索硬化症

Nature Medicine 27, 7 doi: 10.1038/s41591-021-01346-1

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、下位および上位運動ニューロンの進行性神経変性疾患で、孤発性あるいは遺伝性に発症する。発症年齢、運動ニューロンの変性と疾患進行のパターンは、ALS患者間で大きな違いがある。さまざまな細胞過程がALSの病理学的機構を推進している可能性があるが、単一遺伝子による直接的な代謝障害でALSの原因と結び付けられたものはない。本論文では、スフィンゴイド塩基の無制限的合成を引き起こすSPTLC1バリアントが、ALSの単一遺伝子型を引き起こすことを示す。小児期発症ALSが出現する7つの家族で、優性(顕性)に機能する4つの特異的なSPTLC1バリアントが見つかった。これらのバリアントは、ORMDLタンパク質によるセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)の正常な恒常性調節を破壊し、その結果調節されていないSPT活性と、カノニカルなSPT産物のレベル上昇が起こる。これは、SPTの使用するアミノ酸をセリンからアラニンに移行させて、その結果デオキシスフィンゴ脂質のレベルを上昇させ、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーの別の表現型が見られるSPTLC1バリアントとは対照的である。我々は、in vitroでSPTLC1のALS対立遺伝子を選択的に分解の標的とするが、正常な対立遺伝子は無傷のままにすることで、スフィンゴ脂質のレベルを正常化する低分子干渉RNAをカスタム設計した。一次代謝障害のALSでの役割は明らかになっていないが、今回の研究により、スフィンゴ脂質の過剰な生合成が運動ニューロン疾患の基本的な代謝機構であることが明らかになった。

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