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COVID-19:口腔と唾液のSARS-CoV-2感染

Nature Medicine 27, 5 doi: 10.1038/s41591-021-01296-8

味覚消失や口渇、潰瘍のような粘膜損傷、粘膜疹、口腔内斑点などの粘膜病変をはじめとする感染の兆候があるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における口腔内組織の関与についてはほとんど分かっていない。この問題に対処するため、我々は、ヒトの小唾液腺と歯肉の2つの単一細胞RNA塩基配列解読データセット(9サンプル、1万3824細胞)を作製・解析し、50種類の細胞クラスターを特定した。我々は、細胞集団の統合および正規化とアノテーションを行い、小唾液腺と歯肉の間で34種類の固有の細胞亜集団に分類した。小唾液腺と口腔粘膜の上皮細胞には、ACE2TMPRSSのメンバーなど、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス侵入因子が広く高発現していた。RNAとタンパク質の発現を同時に評価することで、小唾液腺と粘膜でのSARS-CoV-2感染が確認された。SARS-CoV-2感染者の唾液には、ACE2TMPRSSを発現した細胞が認められ、持続的にSARS-CoV-2に感染している上皮細胞が含まれていた。無症候性感染者から採取した唾液の無細胞成分と細胞成分はどちらもex vivoでSARS-CoV-2を伝播することが分かった。マッチする鼻咽頭検体と唾液検体ではウイルス排出動態が異なっており、唾液中のウイルス量は、味覚消失をはじめとするCOVID-19の症状と相関していた。上記の無症候性の患者群では、回復時にも唾液中にSARS-CoV-2に対するIgG抗体が持続的に見られた。まとめると、これらのデータは口腔がSARS-CoV-2感染に対する重要な部位であることを明らかにするもので、唾液はSARS-CoV-2の伝播経路の1つである可能性を示している。

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