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COVID-19:COVID-19から回復した患者の液性応答および循環中濾胞ヘルパーT細胞応答

Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-0995-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミックは、世界的なワクチン開発の取り組みを大幅に迅速化することになった。ワクチンの多くは、ウイルスの「スパイク」糖タンパク質(S)を標的としている。Sはウイルス表面に局在し、細胞の受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)の認識に関わっている。SとACE2との結合を遮断する、すなわち膜融合を間接的に阻止する中和抗体の誘導は、ワクチンによる防御方式の1つとして関心を集めている。しかし、Sを用いるプロトタイプ的ワクチンは動物モデルでは有効だが、ヒトでのSの免疫原性についてはほとんど解明されていない。本研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した患者でのスパイクタンパク質に対する液性免疫と循環中濾胞ヘルパーT細胞(cTFH)による免疫について調べた。その結果、S特異的な抗体や記憶B細胞およびcTFHは、SARS-CoV-2感染後に安定して誘導されていることが明らかになり、このことから強力な液性免疫と血漿の中和活性との正の相関がはっきり示された。Sの受容体結合ドメインに特異的なB細胞やcTFHの誘導された頻度は比較的少なかった。S特異的なcTFHの表現型は、強力な中和応答を示す被験者の特徴であり、このことは、Sを用いたワクチンが臨床に導入された際にこれが有効性のバイオマーカーとなる可能性を示している。まとめると、COVID-19から回復した患者は、免疫による効果的なS認識の複数の特徴を示したが、観察された中和活性が広範囲に及ぶことから、ワクチン作製には最も強力に中和するエピトープを選択的に標的とするための戦略が必要だと考えられる。

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