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先天性代謝異常:先天性代謝異常を見つけ出す新生児スクリーニングでのエキソーム塩基配列解読の役割

Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-0966-5

公衆衛生施策としての新生児スクリーニング(NBS)プログラムは、緊急の介入を必要とするまれで治療可能な疾患を、集団規模で確認するために行われている。一連のまれな先天性代謝異常(IEM)に対する新生児スクリーニングには、現在はタンデム質量分析法(MS/MS)が用いられている。一方、NBSeqプロジェクトでは、NBSに対する革新的な方法として全エキソーム塩基配列解読(WES)の評価が行われた。我々は、2005年半ばから2013年の間にカリフォルニア州で生まれた乳幼児450万人中のほぼ全てのIEM症例と、MS/MSによるスクリーニングでは陽性とされたが、追跡検査で病状が見られないとされた乳幼児について、保管されて残っていた乾燥血液スポットとデータを入手した。有効性は個々のIEM間で異なるが、WESの全体的な感度は88%で、特異度は98.4%だった(MS/MSではそれぞれ99.0%と99.8%)。従って、WES単独では、ほとんどのNBS IEMの一次スクリーニング手段としての感度や特異度は不十分である。しかし、MS/MSスクリーニングで異常が見られた乳幼児に対する二次検査としては、WESは偽陽性の結果を減らし、早い症例解明を促進でき、場合によっては、当初の診断よりも、より適切あるいは具体的な診断を提示することもあった。この研究は、IEM症例の全集団に対して行われたこれまでで最大規模の塩基配列解読であり、集団スクリーニングの手段としてのWESの現在の能力について、偏りのない評価を可能にする。

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