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結核:薬剤耐性および薬剤感受性の結核患者での咳エーロゾル培養陽性の細菌および宿主の決定因子

Nature Medicine 26, 9 doi: 10.1038/s41591-020-0940-2

薬剤耐性結核の流行は拡大しつつあり、世界的な制圧努力が失敗する恐れが出てきている。薬剤耐性株は薬剤感受性株よりも感染性が低いと広く考えられているが、その機序についてはまだよく解明されていない。そこで我々は、薬剤耐性結核患者では、咳で生じた吸入性のエーロゾル由来の培養可能な結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を持つ割合が薬剤感受性患者よりも低く、菌が培養可能な咳エーロゾル産生はマイコバクテリアのゲノム変動などの複数の因子から予測できるのではないかと考えた。そして、我々は、452人の結核患者(薬剤耐性は227人)から採取したエーロゾル(10 μm以下)のコロニー形成単位を計数して臨床特性と比較し、結核菌の全ゲノム塩基配列解読、休眠表現型解析、喀痰由来の結核菌の薬剤感受性解析を行った。治療期間を考慮に入れると、薬剤耐性結核患者のおよそ半数が、咳エーロゾル培養陽性であることが分かった。意外にも、結核菌のゲノムバリアント、系譜、休眠状態のいずれもが、咳エーロゾル培養陽性の予兆とはならなかった。しかし、結核菌の喀痰中細菌量、低い症状スコアやより強い咳などの臨床特性は強力な予測因子であり、標的を定めた伝染制限のための介入の助けとなった。有効性の高い治療は、咳エーロゾル培養陽性をほぼ排除したが、効果は常に迅速に現れるわけではない。これらのデータは、現在通用しているパラダイムに疑問を投げ掛けるとともに、公衆衛生戦略に有益な情報を与え、結核の伝染に関する研究を宿主と病原菌の相互作用に方向転換する必要を示唆している。

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