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感染:三次医療機関の環境内での日和見病原体と抗生物質耐性遺伝子の地図作製

Nature Medicine 26, 6 doi: 10.1038/s41591-020-0894-4

消毒は感染制御に重要だが、病院環境での微生物の定着パターンやレジストームについては、まだよく調べられていない。本論文では、三次医療施設のマイクロバイオーム、病原体および抗生物質耐性カセットについて初めて行われた、広範囲にわたるゲノム解析結果を報告する。これは45の病床と関連する179か所で繰り返し(最大で1.5年空けて)行われたサンプル採取に基づくものである。高深度ショットガンメタゲノミクスによって、微生物の遺伝子とバイオフィルム形成によって特徴付けられる抗生物質耐性遺伝子の生態学的に異なるニッチに加えて、それぞれに対応する時空間的多様化のパターンを持ち、ヒトとマイクロバイオームに影響される環境が明らかになった。ナノポア塩基配列解読を用いた準メタゲノミクスによって、数千の高連続性ゲノム、ファージやプラスミドの塩基配列(60%以上は新規)が得られ、病院環境におけるレジストームやモバイロームの多様性や動的な構造の特徴付けが可能になった。系統解析により、多剤耐性株は調べた場所にわたって広く分布しており、安定に生着していることが明らかになった。臨床分離株の比較から、そのような微生物は長期にわたって(8年以上)病院に存在し続けることがあり、患者に日和見感染することが示された。これらの知見は、病院内での抗生物質耐性のリザーバーを詳しく調べることの重要性を明確に示しており、感染予防のための情報資源を目的とする体系的な調査の実行可能性を確証するものだ。

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