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アルツハイマー病:ヒト血液脳関門のin vitroでの再構築は周皮細胞でのAPOE4の発症機構を明らかにする

Nature Medicine 26, 6 doi: 10.1038/s41591-020-0886-4

アルツハイマー病では、アミロイドが脳血管系に沿って沈着し、これが脳アミロイドアンギオパチー(CAA)として知られる病態につながる。CAAでは血液脳関門(BBB)の機能が損なわれ、認知機能障害が加速する。アポリポタンパク質E4遺伝子(APOE4)はCAAの最強のリスク因子だが、この遺伝的感受性の基盤となる機序は明らかになっていない。本論文では誘導多能性幹細胞を使って、ヒトBBBの解剖学的特性と生理学的特性をin vitroで再現する三次元モデルを開発した。我々のin vitro BBBモデルでは、CAAと同様に、APOE3に比べてAPOE4でアミロイド沈着が大幅に増えることが観察された。組み合わせ実験から、周皮細胞様の壁細胞でカルシニューリン–NFAT(nuclear factor of activated T cells)シグナル伝達経路とAPOEの調節異常が起こると、APOE4に関連するCAA病変が誘導されることが分かった。ヒト脳では、APOE4運搬体である周皮細胞でAPOEとNFATの選択的な調節異常が起こっており、カルシニューリン–NFATシグナル伝達経路を阻害すると、APOE4に関連するCAA病態がin vitroとin vivoの両方で軽減される。今回の結果は、APOE4が仲介するCAAで周皮細胞が果たす役割を明らかにし、カルシニューリン–NFATシグナル伝達経路がCAAやアルツハイマー病の治療標的であることを明確に示している。

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