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リアルワールドデータと臨床試験の直接対決を仕組んだFDA

Nature Medicine 26, 3 doi: 10.1038/s41591-020-0772-0

医学界で最近よく取り上げられている話題は、電子カルテや医療請求データベースなどのリアルワールドデータ(RWD)が医薬品添付文書(ラベル)の内容の拡大に使えるかどうかというものだ。米国食品医薬品局(FDA)がこの種のデータを使ってラベル内容を拡大すれば、製薬企業は時間も費用もかかる無作為化比較対照試験(RCT)を回避できることになる。このやり方の支持派は、観察的な試験であれば所要時間が短縮され、また医薬品の効果をより大規模な集団で見られるとしているが、批判派は、無作為化試験なしでは容認できないようなバイアスが持ち込まれると警告している。FDA内でのこうした議論と、研究者間での論争が起点となって、FDAは2017年にブリガム・アンド・ウィメンズ病院と協同で、「RCT DUPLICATE」プロジェクトを立ち上げた。これは、日常的なケアから得られたデータを使って医薬品ラベルを拡大するための体系的試みで、RWDを使って約50件のRCTを再現するというものだ。FDAはずっと以前から、認可医薬品の安全性評価にRWDを使ってきた。COX-2阻害剤の服用による心血管疾患のリスク上昇についての警告にはMedicaidデータベースが使われているし、薬の製造販売後の安全性監視に使用されているSentinel Systemは、幼児でのロタウイルスワクチン使用の重大な副作用を警告するラベル変更の基盤となっている。だが、今回問題となっているのは、この種の医療データの利用を、安全性監視だけでなく、薬剤の有効性についての決定にまで広げられるかどうかということだ。

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